今日はアカデミーの卒業試験だ。これに合格すれば、わたしも晴れて下忍。殉職した両親や兄を追いぬくためのスタートライン。やっとその位置につける。まだ合格するとも限らないのにわたしはちょっと先の未来を想って笑った。

「あれ?なまえ、結構余裕そうだね。もっと緊張してるかと思った!」

太陽みたいなまぶしい笑顔で話しかけてきたのはわたしの幼なじみである波風ミナト。彼はわたしにとって大きな存在だったりする。容姿端麗で成績優秀なミナトはみんなにも人気で、ちょっと嫉妬しちゃうというのはわたしだけの秘密だ(だってそんなこと知られたらはずかしすぎる)。

「ミナトのほうこそ!」

わたしがいたずらっぽい笑みで言えば、ミナトも面白そうに笑った。余裕そうにしていたが実は緊張していたのだけれども、ミナトと話したことによってそれが吹き飛んだ。

「あ、次俺の番だ」

「もう?がんばってね、ミナト!」

すこしばかり談笑していると、早いことにミナトの番になってしまってわたしの緊張は再発してくる。ミナトはがんばってねなんて応援がなくとも合格するだろうが、わたしはどうなのだろう。一緒に下忍になろうと約束したのに、果たせなかったら…?

「ん、なまえも!…きっとなまえなら大丈夫」

ああ、やっぱり。やっぱりミナトはわたしにとって大きな存在だ。こんなにも表情にでないようにしていたのに、どうやらわかってしまうみたいだミナトには

「ふふ、ありがとうね」

わたしは小さく笑ってお礼を言うと教室を出てゆくミナトを見送った。さっきまでの緊張や不安といった負の感情はもうどこにもなかった。そしてミナトは卒業試験となる教室に行ったきり戻ってこなかった。ということはつまり、合格したということ。わたしもがんばらなきゃ。絶対ミナトと一緒に下忍になるんだ

「次、みょうじなまえ!」

いろんなことに考えを巡らせていると、ついにわたしの出番になった。わたしは“はい”と返事をすると席を立ち会場へと向かった。試験の内容は分身を二体以上出せれば合格というものだった。幸いわたしにとってかなり容易いことだった。難しく考えることもなく、わたしの合格はあっさりと決まってなんとなく拍子抜けしてしまう。手渡された額あてを握りしめ、案内された教室の扉を勢いよく開けてみれば数分前に別れたミナトの姿があった。目が合うとわたしはピースサインをして額あてを掲げた。そんなわたしを見てミナトもピースサインをくれた

「おめでとうなまえ!」

「ミナトも!」

わたしは走ってミナトのもとへ行き、空けておいてくれたであろう隣の席に座ると渡されて間もない額あてを見つめた。傾けてみれば、光が反射してまぶしい。まるでミナトの髪みたいだ。これをつけたらわたしも、輝けるかな。これからの忍生活に胸がおどった

(ここから、なんだ。わたしたちは)



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