「なまえは中忍試験どうするか決めた?」
自来也先生に申込書を渡されてから数日。非番だった自来也班のわたしとミナトは久しぶりの修行をするため演習場に来ていた。少し休憩をしようということになり、丸太に腰かけていると唐突にミナトが問いかけてきた。自来也先生は相談はするなと言っていたが、ミナトはそういうつもりで聞いたのではないだろう。
「うん、決めたよ。ミナトは?」
「ん、俺も決めた」
答えたミナトは揺るぎない瞳をしていた。これは決心した瞳だとわたしにも容易くわかる。なんとなく、ミナトとわたしは同じ答えのような気がした。
「「受ける」」
特にお互いの答えを言い合おうなどど打ち合わせをしたつもりはなかったけども、自然と口から出た言葉は見事にミナトと重なった。確かにミナトも言った。受けると。わたしとミナトは瞳を見つめあって笑った。
「そのことを自来也先生には?」
「ううん、まだ」
「ん、実は俺もまだ言ってないんだ」
たぶん、ここから考えていることはふたりとも同じ。あえて確認はしないけれども。わたしとミナトは頷きあってその場をあとにしようとした。が、突然後方から声がした。
「その必要はないのォ」
振り返るとそこには自来也先生が立っていた。あまりにも気配がなさすぎて正直驚いた。まあ、わたしたちに気配がわかってしまうようでは上忍は務まらないかもしれないが。
「自来也先生」
「お前らの気持ちはしかと受け取った」
自来也先生は腕組みしながらうんうんと頷きながら言った。それはなにかに感動しているようにも見えた。そんなにわたしとミナトが受けると言ったことが感動したのかな、なんてくだらないことを思った。
「そういえばチヒロは…?」
わたしが言うと自来也先生はにやりと口角をあげた。その様子にチヒロもわたしたちと同じ答えを自来也先生に伝えたのだと悟った。
「俺も受ける!」
ひょっこり自来也先生の背中から顔を出したのはチヒロ。やっぱりチヒロも受けるらしい。わたしたち三人は顔を見合わせて笑った。その光景を自来也先生は微笑ましく見守ってくれているようだった。
「お互い頑張ろうぜ!」
拳を突き上げて気合いを入れたチヒロを見たわたしやミナトもまた同じように拳を突き上げて頷いた。
「お前ら、何か勘違いしておるようだのォ。この試験は基本チーム戦だ。個人戦は最終だけだからの」
「え?」
「この自来也班、誰か一人でも受けないと言った者がいた場合、受けると言った者も受けることが出来ない。そういうルールだったんだが。やはりワシの目に狂いはなかったということだのォ。お前ら、本日からの半年間は個々の能力だけでなく、チームとしての能力向上にも力を入れるぞ。心してかかるようにな」
「はい!」
自来也先生の言葉にはいろいろ突っ込みたかったが、それをこらえ、頷く。それはミナトやチヒロもそうであったらしく、わたしと同じように頷いた。
(これから半年間、どんな修行にもたえてみせるから)
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