あのBランク任務を終えてからはまた最低ランクであるDランク任務に励む日々であった。今日も今日とて簡単すぎる雑用。それはあの任務が夢だったように感じさせた。でもわたしたちが下忍である以上仕方ないことだということも自覚しているつもりだった。

「お前らに大切な話があるんだが」

本日の任務もなんなく終えて依頼主のもとから徒歩で帰る途中で、自来也先生が真剣そうな面持ちでわたしたちに声をかけた。自来也先生の数歩先を歩いていたわたしたちは同時に振り返り続きを待つ。

「近々行われる予定の中忍試験に出てみんかのォ」

「中忍試験?」

「え?」

「でも俺たちにはまだ早いですよね?」

中忍試験に出てみないか、そう言われ、チヒロわたしミナトの順に驚きを露にした。それにミナトの言ったようにわたしたちには早いのではないか。まだまだついこの間下忍になったと言っても過言ではないのだから。

「確かにそうやもしれん。だがしかし、何も今日明日の話じゃない。半年は先の事だのォ。その間に十二分に下準備が出来るだろう。それにな、先日の任務でワシは確信した。お前らには早々に中忍になる素質がある、とな」

妙に説得力のある自来也先生の言葉にわたしたち全員は黙る。要するに中忍試験に出てみないかというのは、わたしたち三人の能力を自来也先生が認めてくれているということ。半年後。でもやはり早いのではないか。

「返事は今日でなくともよい。一応、申込書を渡しておくからの。各自よく考えるようにな。ただし相談はせず、自分の考えで受けるか否か考えろ。よいな?」

「はい」

目の前に差し出された申込書を受け取りながらわたしたちは返事をした。それからはその申込書を見つめながら無言で帰路についた。途中で散り散りになりながらわたしも自宅へとたどり着き、申込書を片手に忍服や額あてをそのままにベッドへダイブする。

どうしよう。受けるべきかあるいはそうでないか。ふとわたしはベッドサイドに飾ってある写真立てを手に取る。そこには二枚の写真。一枚は家族で撮った写真。もう一枚は下忍になったばかりのころ、みんなで撮った写真。わたしは写真のミナトを見つめる。

ミナトはどうするのだろう。やっぱり受けるのかな。わたしは。出来ることなら中忍になりたい。さっきは早いだのなんだのと言いはしたが、いまのわたしよりも早い年齢で中忍に昇格した者はたくさんいるはず。亡きわたしの兄もそのひとりだ。

「…よし」

試験を受けよう。合格できるかはわからないけども、やるだけやってみよう。わたしは兄や両親を越える忍になりたい。そのことに年齢は関係ない。中忍に昇格できれば、わたしはもっと強くなれるに違いない。ミナトや里のみんなが危ないときでも守ることができるはず。

(わたしは強くなりたい)



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