わたしたち三人の緊張が解けきってからは、自来也先生は実は小説作家であるとか、自来也先生の先生は三代目火影であるとか(ほぼ自来也先生の話だったけど)とにかく色々な話をしながら渦の国を目指した。途中で休憩したり野宿したりして。今のところ特に目立った苦労もなく進んでいるように見えた。

「おお、この湖まで来れば渦の国はだいぶ近いのォ」

確かに自来也先生の目線の先には巨大な湖が広がっていた。その湖の大きさに驚く。きっとこのまま何事もなく渦の国につくのだろう。そう思ってすぐにいやな気配がした。わたしは思わず目線を自来也先生、ミナト、チヒロへと流れるように向けると全員がそれに応えるように頷いてくれた。どうやらわたしの思い過ごしではないようであった。わたしがクナイを取り出そうとしたとき、さりげなく自来也先生はその腕をつかんで制した。

「向こうが仕掛けてくるまで待て。このまま気付かぬふりをして進む。だが気を抜くなよ」

わたしたちにしか聞こえないような声量で自来也先生は言った。無言で頷くと、緊張が再発してきたような気がした。それと同時に背中に汗が流れたのを感じる。だめだ、しっかりしなくては。自分自身に言い聞かせて拳を強く握った。すると、その拳を覆うように別の手に握られた。驚いたわたしは手の先を目で追う。その手の主はミナトであった。

「大丈夫だよ、なまえ」

ミナトの声は驚くほどにわたしの気持ちを落ち着かせ、再発してきたはずの緊張を消し去った。わたしはその言葉に応えるように、もう片方の手でミナトの手をそっと握ったあとまっすぐ前を見て歩いた。数歩進んだところで敵が姿を現し、わたしたちに襲いかかってきた。

クナイ同士の擦れあう甲高い音が辺りに響く。あっという間にわたしたちは引き離されてしまう。みんなを気にしている暇もないほどに敵は攻撃の手を緩めない。“大丈夫”わたしは声に出さず、頭のなかだけでつぶやくと敵を倒すことだけを考えて体術やクナイ、ときどき忍術を使って応戦した。迫りくる敵をなかなか倒すことが出来ずにもどかしさを感じながら、ただただ敵を迎え撃った。すると突然、視界の端に敵に蹴りを入れられてふっとぶミナトの姿が視界のはしっこに見えた。

(その様子はスローモーションのようにも見えた)



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