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最初に自分達が飛ばされた広場には、一つの大きな渦が出現していた。これが帰る為の入り口、のようだ。
「これが……」
「そう。現実と電脳を繋ぐものだ。……現実では私の友がお前達の迎えに行っている。だから安心して帰れ♪」
次の瞬間。
熱斗、炎山、ライカの体が宙に浮いた。−セレナードの力だ。
「待て、貴様……!!何を、」
炎山の抗議は、ウラの王様には全然聞き入れられず。
三人はポイポイ、と、まるでゴミをゴミ箱に投げ捨てるかのように、渦の中に放り込まれたのだった。
((帰し方荒ーーーっ!!))
「………」
ちっとも情緒が感じられないと言うか。
サーチマンが心の中で突っ込む代わりに非難がましい視線をセレナードに向けているが、そんなことを意に介するセレナードではない。
「所で、お前達。オペレーターの危機となると本当に見境無くなるな」
「……余計なお世話だ」
今までの行動を見られていたことにはあえて何も言わない。言っても仕方の無いことだ。それに、このナビなら何でもあり。のような気もする。
とは言え、返しは苦々しくなってしまった。一応、自覚はしていたからだ。
そんな感じで、珍しくストレートに感情−しかも、マイナスの−を露わにしているサーチマンを見て、セレナードが目を見はった。
「随分と私は嫌われてしまったようだな?」
「……そういう訳では、無い……とは思う」
「ほう?なら、何だ?」
ニヤリと笑いながらの問い掛けに、沈黙してしまう。
「………」
嫌い、と言うよりは、………そう、苦手なタイプ。
少し時間をかけて結論を弾き出した彼だが、何となく口に出すのは躊躇われる。なので、口を噤んだままでいたら。
「…サーチマン。いっそ言ってしまえ」
多少苛ついてきたらしいブルースが促す。ちらっと見てみれば、ロックマンもじーっとこちらを見つめていた。
…色々な意味で板挟みとなってしまったサーチマンが選んだ選択肢は、「主がプラグアウトさせてくれるまで黙ったままでいる」だった。何とも不器用な選択肢だ。
そんな様は、逆にセレナードの悪戯心を駆り立てただけだったのだが、賢明ではあるがこういった心理的な事にはとんと疎いサーチマンが、気付くことは全く無かった。
「………ん…っ」
パチリと目を開ける。無機質な床。
上体を起こすと、既に目を覚ましていたらしきライカの、緑色のコートが真っ先に視界に入った。
何で一番最初にこいつを見なければならないんだ、と他人ならどうでも良いであろうことを真剣に考えた炎山は、熱斗の方を見−
「……な、何故貴様が此処にいる…!?」
「頼まれたからだ」
まだ眠っている熱斗を優しく抱き起こしているのは、色んな意味で星になったはずの男、バレルだった。
相変わらず無造作に伸ばしている黒髪を力の限り引っ張って熱斗から引き剥がしてやりたいのだが、熱斗が目覚めてそのことを知ったならば、今度は炎山の方が力の限りぼこられるだろう。それぐらい、熱斗はこの男のことを慕っているのである。
「……おい、毒茸。お前が起きてから俺が起きるまでにこの部屋で何があったのかを詳細に説明しろ」
「そのつもりだ、腐卵。…と言いたいところだが」
深々と溜め息をついたライカ曰わく。
彼が目覚めたその時点で、バレルは既に部屋にいた。聞けば、突如現れた時空流(ストリーム)の歪みの先から、自分を呼ぶ声が聞こえたから、此処まで来ただけ。なのだという。
それ以上から先は−
「光が目覚めてから、と言うことか…」
それは納得いく。
そんな訳で、ライカは何をするでなく壁にもたれかかっていたし、炎山は炎山で、今回の件をどう貴船長官に報告するか悩んでいた。まさか、ウラの王に手伝ってもらった(と言うか、助けてもらった)なんて簡単には書けない。
「……ん………さ…」
身じろぐ音と、僅かに漏れた寝言に、三人の視線が熱斗に集中する。
起きたのかと思いきや、彼はコロリと寝返りを打ち−
ガツッ!!
「いってぇ!!……って、ここ管制室?て、ていうか、バ、バレルさん!?」
…どうやら、彼には色々と衝撃的なことが多かったようだ。
「う、嘘……!!本物!?本物なのバレルさん!!?」
「ああ、本物だ……熱斗君」
一瞬で二人だけの世界を作り上げた熱斗とバレル。
一番長い間真相が語られるのを待っていたのにこれでは、ライカが面白く思う訳がない。
彼がコートの下から取り出したのは、緑のPET。既にプラグアウトは済ませている。
「……おい、サーチマン」
『……何でしょうか、ライカ様』
何時になく不機嫌そうなナビの声に、ライカは目を見はった。どうしたと言うのか。
「……何かあったのか?」
『…いいえ、特には』
絶対に嘘だ。
何年もの間、共に戦場を駆け抜けてきた、孤児であった自分にとっては父とまでは行かずとも、兄のような存在のサーチマン。例え常に無表情であろうと無感情な瞳であろうと変化の分からぬ訳がない。
が、だからこそ詮索されたくなさそうと言うのも分かったので、これ以上は追求しないことにしたライカだった。
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