-2-
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ヒュオオォ……

「ん………」

風の吹く音に、熱斗は目覚める。…風?

五年前よりも更に伸びた髪に触れながら、熱斗は辺りを見回した。…管制室ではない。どころか、

「……ニホンですら無い、よな、此処…」

どっかのジャングル?的な所だ。現実世界で有り得るならばアッフリクだろうが、ものの数分で外国に行けるわけが無い。いや、思ってるより長い間気絶してた?わかんねえ!!

取り敢えず、落ち着こう。そう思った熱斗は、PETを見ようとし。

「……あ、あれ?無い!?」

ポケットにもリュックにも無い。そもそも、さっきまで手に握ってたはずなのに、いきなり無くなっているのがおかしい。まさか、犯人に持って行かれた?

青ざめた熱斗は、やや離れた所で、折り重なるようにして倒れている炎山とライカを見つけた。まだ目覚めてはいないようだ。

慌てて二人に近付いた熱斗は、必死に呼び掛ける。

「炎山、ライカ!!早く起きろっ!!PETとか無くなってんぞ!!後、何か変な場所にとばされた!」

取り敢えずまくし立てた。何分、熱斗は普段起こす立場になったことがない(寧ろ逆)なので、正直よく分からないのだ。何言ったら起きてくれるのか。

幸い、二人は直ぐ目覚めた。そして。

「…何故お前が俺の上に乗っている、卵!!」

「それはこっちが知りたいわ茸」

ずごごごご、と黒いオーラが立ち上る。誰も近付けない、いや、近付けさせない空気だ。

二人の仲は初めて出会った時からそれ程良くは無かったが、五年経った今でもそれはそのままのようだ。どころか、悪化しているようにも見える。…実際には、似た者同士故にお互いを好きになれないだけだが。

しかし、何故かそんな事にはちっとも気付いていない熱斗は、上下で睨み合っている二人に声を掛ける。

「なあ、周り見て見ろよ!!」

五年前よりも幾分か低くなった声に取り敢えず従った炎山は、ライカの上から降りると、すぐさま状況のおかしさに気付いた。

「……此処は…アッフリク…は有り得んか」

「そう長い間気絶していたとは思えん。…まさか、電脳世界?」

パルストランスミッションシステム−−人間の脳波を電脳世界に送り込む、その装置にかけられたとも思えないが……しかし。

「…どうやら、そうらしいな。見ろ」

炎山が青年にしては少し高い声と共に指さした木陰には。

つるはしを抱えたメットールが数体、いた。




「邪魔だよ!!」

怒号と共に、キャノーダムが殴り壊された。

電脳世界の何処かに精神を飛ばされてしまったらしいオペレーター達を探している三人の攻撃力は、著しく上昇していた。早く見つけたいのに見つけられないもどかしさやチップによるサポートを受けられない苛ただしさに加え、次から次へと沸いてくる邪魔くさいウィルス共への怒りが、ただでさえ強い彼等の戦闘力を引き上げている。今や、彼等に近付く雑魚ウィルスや一般ナビはいない。恐すぎる。

「サーチマン!!まだ炎山様達の居場所を掴めないのか!!」

「掴めていたらとっくの昔に知らせている!!」

苛立ちの怒号に、怒号で返す。その間にも、サーチマンはスコープガンを構え、上空から襲いかかって来たキオルシン三体を撃ち落としていた。焦っていても狙撃を一切外さない辺りは、流石である。

「シェロ・カスティロエリア抜けたよ!!」

チャージバスターでユラをデリートしたロックマンが叫ぶ。確かに周りの光景は変わっていて、秋原エリアに出て来たようだ。

そこら辺をのんびりと歩いていた一般ナビやプログラム君達が、こちらを見た瞬間ぎょっとした顔でそそくさと立ち去って行く。が、三人には理由がさっぱり分からなかった。…まあ、気付かない方が幸せだろう。

「どう?」

「…秋原エリアにはいない……が…」

歯切れの悪い。

「……この反応は……ウラインターネット、か…?」

「「!?」」

元々は「プロト」が覚醒した際の対抗手段を封じる為に創られた、犯罪者や凶悪なウィルスの集まるインターネットの奥深く。そんな所に、軍人のライカは兎も角、熱斗と炎山が放り込まれている(かもしれない)だと−−!?

まさしく鬼神の表情(本人らに自覚は無い…)をしているロックマンとブルース。もうどんなウィルスも近付かない。その点、先程のキオルシンやキャノーダムは相当勇気ある存在だった。

「……間違い無い。ライカ様の生体反応がする…」

ウラインターネットへは、秋原エリアからは行けない。

顔を見合わせた三人は頷くと、その地へ繋がる入り口のある、ビーチエリアへと猛進していった。



−−−−−−−
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -