愛してる、それだけ
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彼女の存在を知ったのは十二年前。仲良くなったのも十二年前。彼女と私の関わりは、何もかも十二年前から始まっている。

そう、何もかも。

「熱斗」

「何、メイル」

久々に出会った彼女は、随分と逞しくなっていた。どうやら、地上で色んなことに揉まれた結果の様子。何だかちょっぴり淋しい気持ちになるのは、喜ぶべきことなのだろう。

私と違い、彼女は無理矢理天上の鳥籠へ連れ去られてきた。そして閉じ込められた。何も知らないまま、何も知らされないまま。

そして……、

「今日、誕生日なんでしょ?おじ様に聞いてきたの」

「あ……うん、そう、なんだよな……」

やっぱり、あんまり思い出したくは無いようだ。

彼女が全てを絶たれたのは、幼い頃の誕生日の時だから、仕方ない。

「プレゼント、用意したの。貰ってくれるでしょ?」

「ああ。ありがとう、メイル」

「どういたしまして。ほら、こっち来て。準備してあるから」

「へ?何を?」

「いいから、早く!」

察しが良いときはとことん良いのに。まあ、こんなところも彼女の魅力の一つだから、許すけど。

彼女の腕を掴んで、食堂へと向かう。いつも利用している所とは違って、材料さえ用意すれば自分で自由に扱って良い、器具準備済みのキッチンのような場所だ。

普段はあんまり利用されないが、こういった御祝い事があるなら別。何たって、自分で自由に料理を作れるから。

「ほら、見てよ」

「……すっげえ、これ、メイルが?」

「そ!一から十まで、全部作ったわ」

彼女の大好きなカレーに、マンゴーのゼリー(果肉入り)に、葉野菜のサラダに、生クリームたっぷり使用のショートケーキ。全部彼女の為だ。この為に先月のお給料を結構使った。気にしないけど。

案の定、彼女は目をキラキラと輝かせて、料理(特にカレー)を見詰めている。

「なあ、これ全部食べて良いの?」

「当たり前じゃない。あ、プレゼントもこの部屋にあるから、楽しみにしててよね」

「ああ!−−ホント、ありがとな、メイル」

「せっかくの誕生日なんだもん、楽しい方が絶対良いでしょ?」

「あ……」

やっと、私の意図に気付いたみたいだ。

彼女にとって忌まわしい思い出を、少しずつ少しずつ塗り替えていく。そして、そして。

全てを塗り替え終えたら。

(その時は、私の、想いを)

伝えて伝えて伝えて。

「……メイル」

「何?」

「……その、ありがと」

「気にしなくて良いわよ。……私が、勝手にやってるんだし」

そう、勝手に。

料理は少しずつ、確実に冷めていく。だから早く食べるよう促した。

彼女の顔は、見れなかったけれど、確実に紅く染まっていたのだと思う。

(それで、良いの)

少しずつ、私を、



(意識して)



お願いだから。

(だって、愛してるの)



本当よ?



この感情を、「愛情」と呼んで良ければ、だけれど。



12/06/09
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メイル初登場?
今年も青組誕生日……なんですが、ロック存在ハブってごめん!ほんとごめん!
ちなみにプレゼントは……想像してください(え)
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