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多分外で繰り広げられているのであろうドンパチの音も、コンテナの中ではそれ程聞こえなかった。
「ロックマン、何時終わると思う?」
『さあ……。そんなに人数は多くないみたいだから、直ぐに終わると思う、んだけど……』
「あー……暇っ!」
『熱斗君。外で炎山君とライカ君が頑張ってるのに、それはどうかと思うよ』
「分かってっけどさー」
本当に何にもすることが無いのだ。それに、さっきから「コンテナの中」は駄目だ、そんな感じがして−−
(あ)
思い出した。
あれは十年前。ロックマンが自分の元に来て間もない頃。かくれんぼで遊んでいた時、コンテナの中に隠れて、でもこれは廃棄予定だったもので、それでプレス機に掛けられて。
まさか子供がそんな中にいるとは思いもしなかったのだろう。当然のように潰されかけて、死んじゃうのかな、そう考えた時に、家に置いてきたロックマンが来てくれたんだ。
当たり前だけど、ロックマンにはコンテナをどうにかすることは出来なくて、でも励ましてくれたから、足掻くことが出来た。運が良かったのか、コンテナの壁がうまく裂けてくれたし。
(でもあれ以来、コンテナの中なんて出来る限り入らないようにしよう、って決めてたから……)
今回ばっかりは仕方ないが、やっぱり気になっている、のかもしれない。
とにかく暇を紛らわす為に、ころりと寝転ぶ。見えるのはやっぱりコンテナの壁。あーあ。
「……ウィルスやナビ相手だったら幾らでも戦えるのになあ」
『護身術でも習ってみる?炎山君みたいにさ』
「それも良いかも」
あんな使い手には絶対なれないとは言い切れるけど。最低限自分の身を守れる程度には習得出来る、かも。
そこまで考えて、ふと思う。
「ライカは、軍人だから武器も使えるし、格闘とかだって出来るんだよな」
『どんな軍や部隊でも、白兵戦の技術は必須、らしいからね』
「……何で軍人になったんだろ」
『それは本人に聞いた方が早いと思うな』
「だよな」
終わったら聞いてみよう。多分答えてなんかくれないだろうけど。
チップケースから取り出したシンクロチップを弄ぶ。とにかく、何かしらで暇を潰したいのだ。
(あ、でも……)
何か大切なことを忘れてる、よう、な……?
「あーーっ!」
『ど、どうしたの?』
「ダミーのウィルス反応!ちゃんと調べて無いじゃん!」
『そういえば……そうだった』
「実体化ウィルスの反応を出せるような偽造装置、だと思うんだけど、サーチマンや科学省を騙せるぐらいなんだから、相当上手く出来てて、しかも見つけにくくはしてると思うんだ。ある場所自体は反応がある所で良いだろうけどさ」
『僕もそう思う。それと、装置は現実世界にあるんじゃないかな?』
「電脳世界に仕掛けたんじゃ結局電脳世界からの反応になっちまうもんな。じゃあ、反応はこの辺にあったから、この辺にあるんだと……おっ」
コンテナの片隅に、何かがキラリと輝いていた。
近付いて見てみる。へんてこりんな形だ。幾つもの四角い金属の箱を継ぎ接ぎした、まるで幼い子供が適当に積み上げた積み木のような。
『多分、これだね』
「持って帰った方が良い、よな……」
現物があった方が、きっとパパ達も調べ易いだろう。
そう思って、装置らしき何かに手を伸ばし……直ぐ引っ込めた。
電流が流れていた。
『熱斗君、大丈夫?』
「っ、ああ」
『プラグイン出来るみたいだから、僕が調べるよ』
「分かった、任せたぜ!−−プラグイン!ロックマン.exe、トランスミッション!」
PETから伸びた赤外線が、プラグイン端子に吸い込まれる。
自動的に浮かび上がった3Dモニターに映し出されたのは、転送が完了したロックマンと、小さな電脳世界では充分「大量」といえるだけのウィルスの群れだった。
『熱斗君、援護よろしく!』
「分かってる!−−バトルチップ『スプレッドガン』、スロットイン!」
チップが送られるとほぼ同時に、ロックマンの右腕が拡散式バスターにコンバートされた。
『いっけえ!』
放たれたエネルギー弾は次々と拡散して、何十の雨となり、ウィルス達の頭上に降り注いだ。
一方、その頃。
「−−こいつで終わりか?」
『はい』
「案外、楽勝だったな」
二人共成熟仕切っていない少女、ということで侮られていたのか、それとも単純に大した相手ではなかったのか。
死屍累々(死んではいないが)の惨状の中で、ライカと炎山は次々と襲い掛かってきた男達に縄を掛けていた。その辺で拾ってきた得体の知れない縄だが二人は何も気にしていない。
「で?何でこいつらは俺達をわざわざおびき出してまで倒そうとしたんだ?」
「さあ、な。サーチマン達を倒すより直接俺達を狙った方が楽だと思ったのか、それとも……」
「元々、俺達の誰かがターゲットだったか」
熱斗は光祐一郎博士の一人息子、炎山はIPCの御曹司にして副社長、と考えれば、何者かに狙われるには充分だ。
面倒なことに巻き込まれた、思いながら男達の懐を(勝手に)探っていたライカは、あるものを取り出し、(これまた勝手に)広げた。
(これは……)
一枚のメモ。そこに書かれていた内容は、嫌な予感を駆り立てるものでしか無かった。
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