Let's play
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ビヨンダート。「異世界」あるいは「並行世界」。どこぞのゾアノロイドのせいで紛れ込んでしまった先。

食糧と言語に関してはちっとも問題無い。出会った異世界人は幸いにも親切にしてくれる存在だった。

少しばかり、伝える情報が足りなかっただけで。

「……なあ、ライカ」

「………」

「ナビって、ディメンショナルエリア無しで実体化出来たか?」

「いいや」

「なら何でトマホークマンが実体化してんだよっ!?」

「それは俺が知りたいっての!」

彼等が前にしているのは、コンクリートで作られた円状に広がる壁と、ウィルスのせいで故障してしまったらしい、スイッチ開閉式の巨大な門。重厚感のあるそれは沈黙を保ったまま閉ざされており、中に入れるのか、入れたとしても生存者がいるのかも分からない状況だ。

電子機器を侵したウィルスに対しては、ネットナビを送り込んで駆除する。という常識に則した行動をディンゴは取った。それは「自分達の世界」では正解の行為。

だがこのビヨンダートでは、誤答でしかないらしい。プラグインした筈のトマホークマンは、何故だか自分達の前に実体を持って現れた「だけ」なのだから。

「と、なると……」

ライカは呟きながら己のPETを取り出し、赤外線端子を門のスイッチに向けた。

「プラグイン!サーチマン、トランスミッション!」

伸びた赤外線はスイッチに到達することなく、人間によく似たナビの姿を描いた。

トマホークマンと同じく実体化して現れたサーチマンは、結果を予測していたらしく、普段と取り立てて変わらない無表情だった。

「どんなナビであろうと、無条件で実体化する、ということか」

「みてえだ。……すっげえ…」

理屈はよく分からないが、事実は分かった。なら問題は無い。

「サーチマン。半径五百メートル以内の生体反応を探れ」

「了解。サーチします」

あっという間に順応したのか、ライカは当たり前のようにサーチマンに命令し、彼もまたそれに応えた。彼の左目を覆うスカウターにデータが流れ始める。

一方、ペタペタ扉を触っていたトマホークマンはディンゴとライカを振り返ると、右手を斧にリライトした。

「結局、どーやって入るんだよ?」

「……生体反応が無ければ、扉か壁を破壊する。有れば迂回するか、或いは中への連絡手段を探すしか無いな」

「あ、そっか。中に誰かいたら、そいつが襲われたら困るよな」

何せ、このビヨンダートには実体化した獣化ウィルスやゾアノロイドがウヨウヨしているのだ。頑丈な壁や扉は、彼等の侵入を防ぐ為に作られたものだろう、それを勝手に壊すことは迷惑でしかない。勿論、中に人がいれば、の話だが。

「サーチ完了。生体反応は有りません」

「そうか。ならば、やるぞ、ディンゴ」

「ああ!トマホークマン!」

「いくぜ!−トマホークスイングっ!」

勢い良く振り抜かれた斧は、破壊するまでには至らずとも、かなりのダメージを扉に与えた。

真一文字に出来た傷と扉の切れ目に、サーチマンは照準を定める。

「バトルチップ『センシャホウ』、スロットイン!」

サーチマンの右腕がスコープガンから、巨大な大砲にコンバートされた。

「発射(ファイア)!」

−砲身から勢い良く吐き出された砲弾は、事前に傷付いて悲鳴を上げていた扉にとって、致命的な一撃となった。

轟音を上げて倒れた扉の向こう側。土煙が上がりながらも確認は出来た。廃墟そのものだった。

「ひっでえ…。これもグレイガかファルザーの仕業か?」

「その可能性が高いな。少しでも生きているモノか、或いは使えそうなモノが有れば良いんだが」

何の遠慮も無く未知の地へ入り込むオペレーター達を、ナビ二人は顔を見合わせて、それから追い掛ける。

崩れて散乱した瓦礫、埋もれてしまったらしい物資、そして全く感じられない生者の気配。

正に「廃墟」の中を、まるで遊びに来たように歩き回る二人を、何の咎めもしないで。



(遊びに来たんじゃないけど、そんな気分じゃないとやってらんないから、此処)



12/04/10
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ビヨンダートにて緑、斧組ペアはいつナビの実体化を知ったんだと思ったことから発生した話。
斧組は大袈裟なまでに驚いて緑組は無駄に落ち着いてそうだ。ただどっちも順応自体は早そうなイメージ。
しかしグダグダであるこの話。
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