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『響ミソラ主演コンサート襲撃事件』から一週間後。

「ハープと契約した時のことはよく、覚えて無いの。ただ、自分の音楽を守らなきゃ、ずっとそれだけ考えるようになって……」

「あの騒ぎを起こした、という訳か」

かなり突発的かつ計画性は無し、加えて本人が深く反省している上、負傷者も無し(あの音塊は所謂威嚇に過ぎなかったらしく、確認してみれば直撃していた訳ではなかった)と来れば、返って表立った事件には出来ない。

なのでセイバー達はかなり手を回して、今回の事件におけるミソラの扱いを加害者から被害者に書き換えたのだ。

「で?これだけの事件があった訳だが、芸能活動は続けるつもりか?」

「……もう決めてるわ。大丈夫」

晴々とした笑みは、昨日までの彼女ならきっと浮かべなかっただろうもの。

「私、響ミソラは−−」



一方、別室。精霊取調室。

「……反省の色まるで無し、と」

「いやあね。上司の命令だったんだもの、仕方ないじゃない」

「よくある言い逃れアリガトウ」

「それに私、これで失敗したことになるから、きっと星座精霊界から新しい刺客が来るでしょうね。やっと面倒臭いことから解放されるわ、有り難いことね」

「何、もしかしてあんたこの状況を逆手にとるつもり?」

「ナイス解答よ。さあどうするのかしら、セイバーさん」

彼女を罰するのが一番手っ取り早い。というかしない訳が無い。しかし問題はその後だ。解放すれば何をするか分からないし、大人しく閉じ込められてくれるとは思えないし、彼女の奪還の為に星座精霊界が動いてもおかしくは無い。

何にせよ、彼女の存在が最早厄介でしかないのだ。

(でも、普通に還しても何されっか分かんないしなあ)

「分かった。ならばこれはどうだ」

ハープ一人が読めない笑みを浮かべ、他二人−−アクセル、熱斗−−が悩んで黙りこくる中、切り出したのはゼロ。

「魔物を呼び寄せるわ罠は仕掛けるわスタッフほぼ全員拘束するわ、やりたい放題やってくれたからな、貴様は」

ちなみに一番目は彼女の魔力性質を良く知り、かつ最初に襲撃されたウォーロックの言で、二番目は当の本人が至極あっさり白状し、三番目は罠を解除している途中、ブルースが曲弦糸によって捕らえられていたスタッフを発見した故に立証されたことである。

「だから、貴様には逐一様子を報告させる見張りを付けよう。ついでに、身柄の本拠もこちらに置かせてもらおうか」

つまりは、保護観察処分ということだ。

「案外何てことのない処分ね。嬉しいことだけど」

「見張りもお誂えの人材だ。ほら」

言いながら、彼はある書類を取り出した。

そこに張られていた写真は。

「あんれえ?ゼロにしては優しい処分だね」

「これで一見落着だな!」

「……ふふっ。なかなかやるわね。参ったわ」

ま、強制送還よりずっとずっと良いわね。加えながら、ハープはやれやれと両手を挙げた。



そして−−

『ハァーイ、みんなこんにちは!響ミソラでぇーすっ!』

『今日はみんなに伝えなきゃいけないことがあるんだ……』

『私、響ミソラは本日のこのライブをもって………引退します!』

『みんな、そんな顔しないで。私、しばらく…そう、自分のこと見詰め直して……それが終わったら、絶対戻ってくるから』

だから、だから。

『それまで、頑張って。私も……頑張るから』

諦めないで、前を見るから。

『じゃあ、今のところのラストライブ始めます!みんな、盛り上がろー!!』



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最後の方駆け足になっちった。
流星1とアニメ流星の琴座組のエピソードアレンジ。このエピソードは好きで絶対外したくなかったんだぁ…。
ハープが曲弦師なのは何と無く「琴は弦があるから琴だろ」とかいう意味不明な理由から。電波変換しないまま戦うからマシンガンストリングはどっちの技になるやら(因みに音塊はショックノートです)
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