11.鋼鉄の世界
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「ねえ、ゼロ」
「何だ」
「昔は、さ。世界にこんな森は無かったんだって」
機械と融合した木の幹を撫でながら、エックスが言う。それをゼロは、黙って聞いていた。砕けたメカニロイドの破片を踏みにじりながら。
現在の世界は機械に覆われている。海も底を見れば、自分達レプリロイドが設置した機材が広がっている。機械の無い所など無いと断言出来る。
しかし過去、レプリロイドが存在していなかった時代では違うらしい。
「森は「森」。海は「海」。機械があるのは人の住む街の中だけで、木は「木」のままだったみたいだ」
愛おしそうに幹を摩り、そして離れる、人工皮膚に覆われた金属の手。
「……何でだろうな」
「自然が機械との融和を選んだ、それだけだろう」
「ゼロはあっさりしてるよな、そこら辺は」
「昔の事など記録以外では確認出来ない。推測するしか無いのなら、確証があるとは言えない。根拠の無い想像をするぐらいなら、溜まった始末書の処理方法を考えたいのさ」
「それもそれで、どうかと思うんだけど……」
実際、ゼロの言う通りなのだ。遠い過去を知る者は今やいない。自分達を含めて。
自分が知っているのは、人間の言う「夢」を見たからだ。その中でも、誰かの見せてくれた写真に写っていた風景でしかないモノだった。
だけれど、だけれど。
「気になったんだ。俺は何でか、そんな風景が本当にあったのを知ってるみたいで、だけど覚えてる訳じゃないし、だから少し、調べてみたんだけど、」
「大して分からなかったのか?」
「……ああ。色々あったから、資料が散逸しているんだろうってエイリアが言ってた」
「そうか……」
新入りながらも腕の良く、加えて真面目なオペレーターである彼女が言うからには真実そうなってしまったのだろう。
シグマの反乱、カウンターハンター襲撃、ドップラーの乱心、レプリフォース動乱。
幾つもの、到底「騒動」の枠に収めきれない程の事件が立て続けに起きたお陰で地上は荒れ果て、同時に失われつつある過去を記した、貴重な資料や遺物も多量に破壊された。
(過去を振り捨て、現在を生きろ、ってことなのか?)
過去の残滓は失せて行き、代わりに機械に満ちたこの世界は、……その象徴、なのかもしれない。
「エックス、そろそろ行くぞ」
「……ああ」
惑うことのない思い人の背を追い掛けながら、風景を見遣る。
機械に絡み付いた蔦、草花を摸したメカニロイド。
世界はそんな風に機械混じりで、自分達が純粋な自然を見ることは無いのだろう。
(なら、俺は)
せめて、そんな過去があったという事実だけでも抱えて生きて行こう。
(きっと、現在を生きる、糧の一つにはなるだろうから)
12/01/27
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XやZEROの世界を見て思うことをそのまま。まだユーラシアは落ちて無いよ!ついでにゼロックスですら無いよ!
ゼロやアクセルは割り切ってるところ多いよね。エックスぐらいじゃないだろうか、こんなこと考えるレプリロイド