いつかの憧憬は変わらず
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自分が今まで信じていたエボンの教えは、まやかしに過ぎなかった−
(私、どうしたら良いのかな)
世界を脅かすシンを倒す唯一の手段、究極召喚を手に入れる為、ユウナは今まで旅を続けていた。けれど実際は−
「なあ、どうしたんだよ、お前」
「えっ?」
慌てて振り返る。薄金の髪に紅い瞳の少年が立っていた。
「さっきから暗い顔してさ。何かあったのか?」
「べ、別に−何でも、無いよ」
「ふーん…」
言葉を鵜呑みにしている訳でも無ければ、疑っている訳でもなさそうな、不思議な声音だった。
「言いたく無いんだったら良いや。俺、ヴァン。お前は?」
「私はユウナ。…君はどうして此処にいるの?」
純粋な疑問だった。此処は自分にとって最も思い入れの深い地、ビサイド島。豊かな自然と聖ベベル宮から最も遠く離れた寺院以外には特に何も無い島だ。目の前の少年は雰囲気からしてエボン自治区の民では無いようだし、一体どうして。
と、ヴァンはポリポリ、頭をかく。
「何と無く」
「…?」
「俺、空賊なんだ。−空賊って分かるか?」
「スフィアハンター、みたいなものかな?」
「お宝を探す、っていう点じゃ、そうかも」
そう言ったヴァンの瞳は輝いていた。希望に満ちた瞳。
今までの私は、そうだったかな−ふと、思う。みんなを救えるのなら、死ぬのも恐く無い。そう考えてた、私。
「そうだ。何もやること無いんだったらさ、ユウナもそのスフィアハンターってやつ、やってみろよ」
「えっ?」
「やること無いからボーッとしてたんだろ」
…正直、今初めて会ったばかりの少年に当てられるとは思っていなかった。
そう。召喚士では無い自分は一人のちっぽけな女の子。自分一人でじゃやりたいことも見付けられない。今までやりたかったことは、無くなってしまった。
「それか、俺と一緒に大陸に行かないか?面白いやつ、たくさんいるからさ、一緒にいる内にやりたいこと、見付かるかも」
「大陸…。…楽しそう、だね」
「それじゃ、決まりだ!」
笑顔。"夢"を追い続けていた自分が見たかった、希望に満ちた笑顔。
「……うん!」
(私、夢を見ても、良いんだよね?)
11/12/04
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あまりにも無いこと放置されていた拍手文その三。
ヴァンとユウナという異色コンビ。結構この二人って似てるとこあると思う。自分をごまかす時期があるとかさ