innocente[インノチェンテ]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「………」

「………」

−重い、沈黙が重いっ!誰かどうにかしてくれや五百円あげるからっ!

ソウが内心で絶叫しているのに、目の前の少年−レンは気付いているのか、いないのか。沈黙からも、灰白の瞳からも読み取れない。…ただ、何か心読めそうな雰囲気あるから分かっていてもおかしくはない、うん。

彼の腕の中には一つの卵。青と白の水玉模様。今度は水タイプあたりか。前はジグザグマとか言うポケモンやなかったっけ、つかあんさんどんだけ卵にご執心やねん、とか全く関係無いことを思う。じゃないと精神持たんわ。

「………卵」

沈黙の末、レンが漸く口を開いた。気付くのに数秒かかった。

「……ん?」

「………あげる」

「へっ!?」

渡された卵を条件反射で受け取ってしまう。カタカタ、揺れたのは気のせいだと思いたい。

「…もうすぐ、生まれると思う、から……」

「はいいっ!?」

何でそんな状況で渡すねん!

ビックリドッキリ展開にソウを叩き落とした張本人はリュックをゴソゴソ、また新たな卵を取り出す。四次元リュックか、とかツッコンでる暇は今のソウには無い。

更にはボールをポン、ウォーグルのウルキを出した彼はよいしょ、ウルキの背に乗った。

「…じゃあね……」

「え、ちょっ待ってぇぇえ!全っ然着いて行けてないんやけど俺ぇ!」

心のままに絶叫するがしかし、マイペースを貫くことにしたらしいレンには華麗にスルーされ。

落ち込むソウの傍らで卵にピキリ、ヒビが入る。−誕生の予兆。

「…え、マジで。待ってくれまだ心の準備終わってな」

パカーン。

「ルリッ!」

「………」

何やコイツ。俺知らんぞ。知らんってことはホウエンやシンオウのポケモンやな。思考回路が無駄に冷静になってきた。

目の前の孵化したてのポケモンはマリルに似ていたが、しかし別物だった。全身青いのだ、それに一回り小さい。

(…明らかに俺のこと親やと思ってるよなコイツ……)

キラキラした無垢な眼差し。…完敗や、可愛い過ぎるやろ。そや、後でユウキあたりにコイツの種族名聞こっと。

そう決めたソウは目の前のポケモンの頭を撫でた。ルリッ、無邪気な鳴き声で、彼(彼女?)は応えてくれた。



(無邪気な姿にノックアウト!)


11/12/04
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
卵って良いよね。な春から初冬まで放置されていた話その二。
ソウは誰にでもつっこんでくれる書き手に優しいキャラです個人的に。レンやコウキはなかなか動いてくれないからなあ(苦笑)。
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -