思い直す
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「バトルチップ『カンケツセン』、スロットイン!」

威勢良く響く少年の声と共に、地に押し当てられた手の平から水流が溢れ出す。

鉄砲水と化したそれは今まさに、負傷した少女に襲い掛かろうとしたウィルス達を次々と飲み込んでいった。

波が消えると同時に飛び込んだ赤の影を見送ると、熱斗は直ぐに、ライカの側に駆け寄る。

「大丈夫か、ライカ!?」

「……っ、ああ…」

勝手に分解されてゆくデータと先程引き裂かれた自らの傷を押さえながら、ライカは弱々しく頷いた。

彼女とサーチマンは今、いわゆるHPバグと言われる異常に侵されている。遅行性の毒にも等しいそれは、彼女達を酷く苦しめていた。それこそ身動きが取れなくなる程に。

『ライカ様……、今すぐにCFを解除して、下さい…』

「……それが出来る状況なら、そうしてるんだが…な…」

まだウィルスは全滅していない。耐久の遥かに落ちる生身でいる方が危険だ。

「お前はそこでジッとしてろ。ウィルスは俺と光で片付ける」

彼女達に押し寄せるウィルスを切り捨てた炎山はそれだけ言うと、再び敵陣に切り込んでいく。

「俺も行く!−ライカ、ちょっと待ってろよ。終わったら直ぐ科学省に行って、パパに見てもらおうぜ」

「………」

バスターを打ちながら、ニッカリ笑ってそういう彼を見て。次に、白と黒の髪をなびかせながら敵を倒していく少年を見て。最後に、自らの傷と刻一刻と消滅するデータを見て。

うなだれた様に、彼女は俯いた。

(俺は……)

仮に、一人だったなら。今頃やられているだろう。CFを解くなど以っての外だ。

だが、今は。

「…頼む」

「任せろって!−バトルチップ『バリア』『ワイドソード』、スロットイン!」

静かにCFを解除したライカの周囲にバリアを築いた熱斗は、右腕の剣を思い切り振り上げた。

数瞬の後。響いたのはウィルスが空しく消滅する音。

(……ちょっと前は下手くそだったクセに)

随分戦いが上手くなった。それは戦わざるを得ない事態が多かったという事実を映し出したことだから、喜んで良いことではないのだろうけど。

危うさは残っていても、かつてよりずっとずっと頼りがいのある背になった。

そう感じながら、ライカは静かに瞼を閉ざしていく。狭くなる視界と共に遠ざかる戦いの音、薄れていく意識。



(熱斗、伊集院。後は、)



11/10/22
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ライカ女体化してる意味皆無。まあ私にはよくあることだ。
ピンチの緑組のカバーをする青、赤組。戦闘の描写もっと多くしても良かったかな?
「#お仕置き」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -