reckless love
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『熱斗君、熱斗君』
PETの中から呼び掛けてみる。そっと、そっと。
「何、ダーク?」
『…バレてる?』
「当たり前だよ」
笑いながらボタンをポチリ。キュン、音と共に実体化。現れる、濃紫の髪に深紅の瞳、ロックマンと酷似して非なる存在、ダークロックマン。
ネビュラとの戦い以来、どうしてだか分からないがロックマンとダークは人格が同居するようになった。ロックマンはその事実を面白がってなのかは分からないが度々ダークと入れ替わっている。今回もそうなのかな。
「宿題、捗ってんのか?」
「………」
「目、逸らすなよ」
笑顔が一瞬で消え、ふて腐れた顔に。ハハン、機嫌が悪げなのは宿題のせいか。言いながらそう思う。
「…みんなに怒られてさ」
「…いやぁ、そりゃあ、うん」
熱斗はまだ中学生だ。既に大卒済みの炎山や飛び級で軍学校を卒業したライカから見れば、宿題をサボるという行為は考えられないことだろう。
苦笑しながら、言う。
「言っとくけど、手伝わねえからな」
「えっ」
「中学生なんだから自分で考えろよ」
こんだけ突き放せば流石に自分だけでするだろう。そう思った。いくらの俺様だって「表」は恐いんだよマジで。後隣ん家のピンク髪の女。
うーん、うーん。唸った熱斗が突然、閃いた顔でポン、と相槌。
「もう今日は宿題やめっ!どっか遊びに行こうぜ、ダーク」
「はぁ!?」
「なーんも思いつかねえんだもん。気分転換だよ、気分転換!」
ちょっとぐらい良いだろ?ニカッ、笑いながら言う目の前の小僧にのけ反りそうになる。同時に、何だかどうでも良いような気にもなった。
「それにさ、俺、ダークとは一回何処かに遊びに行きたかったんだ」
「俺と?…ロックマンとじゃなくて、か」
「うん」
あ、別にロックマンのことが嫌いだからとか、そういう理由じゃないぜ!ダークの表情を見て何か勘違いしたのか、慌てた口振りで付け加える。
「ダークのこと、好きなんだ。だから、ダークと一緒に色んなとこに行きたいし、…ダークがどんな風に周りを見たりしてるのか、知りたいよ」
ポツリポツリ。落ちた言葉に驚いた。…俺のことが、好き?
「………ねぇ」
「え?」
「−ッ、何でもねえよ!それより、どっか行くんだったら早くしろよ」
これ以上引き延ばしたらこっ恥ずかし過ぎて死にそうだ。
(それに、)
分からない。何故コイツが、「表」より俺を選んだのか−そもそも、くだらない誘いに乗っている自分が謎。
しかめ面になりそうだった。しかし、楽しそうな熱斗の表情を見ればしかめ面なんて吹っ飛んだ。
(…まあ、いいか)
ちょっとぐらい。後で「表」がぎゃあぎゃあ噛み付いてこないことを期待しようか。
(君のがむしゃらな恋心に、負けました)
11/04/06
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がむしゃら、がむしゃらって案外難しいね。実体化云々は中学生時代はロクとブルだけ、それから熱斗の周りを中心に徐々に増えて5年後では当たり前の技術になってる、という設定。
攻め熱斗君は押せ押せ。ダークは意外と受け身な感じ。