正攻法で残業代を請求します
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ラグ、本名(と言えるかは微妙だが)はラッシェン・ジルフィー。過去のてんやわんやを乗り越えた現在では諸々の条件の下、占い師兼カレー屋の(臨時)アルバイト兼セイバーの一員として働いている。

自分の"元"となった義兄と同じ職場で働けるのは嬉しい。嬉しいのだが。

「…俺に掛けられた命令は知っているんだろう?」

「そ、それは知ってるんだけど、…お願い!」

両手を合わせて拝み倒してくるコイツ。確か双葉ツカサとか言ったか。数十分前からこんな感じ。

仕事やプライベートで外に出掛けている時は別段占うことに問題は無い。だが、セイバー本部にいる時は事件関連以外では占わないことにしているし、上層部からもそう命令されている。

そして、現在地はセイバー本部。…すなわち、彼の願いは聞けるものではない。

それでも尚食い下がるつもりであるツカサの隣に突如、真っ黒な塊が盛り上がる。

見る間に人型−それも、目付きと表情以外はツカサに瓜二つ−となったそれはツカサを一発、コツリ。

「お前なあ…。相手が無理だって言ってるんだからさっさと諦めろ!」

「でも一旦外に行ったら何処に行くのか分からないんだもん!それに、僕はスバル君との相性を占って欲しいだけだし」

「それこそ外で頼めば良いだろうがぁぁあぁっ!!」

「……」

何時も何時もこうなのだろうか。だとすれば、この"影"も随分苦労していることだ。

目の前のこの少年、必ず一つの特異能力を持つ悪魔の内でも特に珍しい"影鬼"だ。本体だけでなく"影"も独自の意思を持っており、本体と"影"の入れ替わりは本人達に限り自由自在。更に、条件を満たしさえすれば時間制限付きで"影"を実体化させることが出来る(もちろん、"影"が意図的に実体化することも出来る)。

要するに、双葉ツカサの"影"、双葉ヒカルが実体化し、本体であるツカサを諌めているという訳だ。

事情は大体把握した。何を占って欲しいのか、それは今までぼかされ続けていたのだが、…何だ、そんなことか。

自分にとってはそこまでこだわることでもない用件だ。思い、溜め息をつく。

「そういう頼みはヒカルの言う通り、外でしてくれ。…無料にしてやるから」

自分に支払われる報酬の額など、元々依頼主の気持ち次第だが。それでもこれは軽いリップサービスと言い張りたい。ぶっちゃけ適当言って追い払いたいだけなのだが、それは内緒。

言った途端、ヒカルに押さえられていたツカサの頭が跳ね上がる。バネ仕掛けの人形のよう。

「タダ!?ホントに!?」

「あ、ああ」

「じゃあスバル君との相性と、これからの金運と、将来のススメと、それから−」

「……」

前言撤回してやろうかな。本気でそう考えた。

「いくら何でも厚かましいだろうがよ!」

「だって、折角タダって言ってくれてるんだから、チャンスは利用しなきゃ」

「……取り敢えず、帰れ今すぐ」

もう疲れた。義兄さんでもアルトでも誰でも良い、助けて。

えーっ、声を上げるツカサにお前が悪い、そう言うヒカル。またギャイギャイ口喧嘩を始めそうな二人(一人?)からそそくさ離れる。

いったい迷惑料は誰に請求すれば良いんだ。そう思いながら。



11/03/10
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久しぶりにラグやツカサを出したくて。ヒカルも漸く登場。この二人はこんな関係だと思ってますいつも。迷惑料はシドウさん辺りに請求してるでしょう。
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