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「…いい加減、仲直りする方法を考えないのか」
窓の外から突然、低い声。
「……何してるの、カイン」
「バックヤードがあんまりにも狭いからという理由でお前が俺だけを外に放り出したんだろうが…!!」
「あれぇ、そうだったっけ?」
「………!」
哀れなりバロンの翼竜。
「だが、カインの言うことは正しい。このままではフリオニールとティーダの仲は悪いままだ」
「そうだな、最悪絶交されるかもしれないし、打てる手は打った方が良いだろう」
こういう時にだけ意見の合うライトとライトニングに押され、漸くフリオニールが復活する。察したスコールが無言で差し出した空の箱を、彼は受け取る。
「どうするの?」
「……取り敢えず、ティーダに色々説明してみる」
「どうやって?」
「そ、それは……、電話、とか」
「それが、ねえ…」
珍しく視線をちらちら泳がせて、オニオンは言葉を切る。…そんなに言いにくいこと、まさか。
「アイツ、携帯の電源切ってるみたいだぜ?家の方に掛けても親父さんしか出ないし」
ザシュッ!
フリオニールに9999の以下略!
「バッツぅううぅっ!」
「だあってホントだし。事実を隠すのは良くないだろ?」
「世の中には知らなくて良いことも有るんだ…」
「でもさ、知らないで電話掛けてちっとも掛からなくて落ち込むよりはマシだろ?」
「……」
普段からふざけている印象が強いバッツであるが、故に真面目な台詞もまた強く印象に残る。
要するに、この台詞はとてもとても正論だった。
「どうするの…?」
「うっ…」
頭を抱えるフリオニールにあっさり言い放ったのは、ヴァンだった。
「じゃあさ、ティーダに会いに行って直接謝れば?」
…沈黙がバックヤードに降り積もること数秒。
「あのねえ、ヴァン。甲斐性無しのフリオニールにそんな高度なこと出来ると思ってるの?」
「え?俺パンネロとかと喧嘩した時絶対そうしてるぜ?」
「……ヴァン、よく聞け。お前とフリオニールとじゃ精神構造が全然違うんだ。フリオの方がずっと柔らかいの!」
「でもフリオニールだって男だろ!それぐらい出来ないと女としては嫌だってアーシェが言ってたぞ!」
そのフリオニールに大ダメージを与えまくっていることには、どうやら三人は気付いてはいないらしい。
呆れ果てたライトニングが馬鹿馬鹿しい言い争いを続けるオニオン、ヴァン、ジタンの三人から視線を逸らす。綺麗に整頓された机。置かれているものは−
「大体さ、どうやってティーダに会いに行くの?ザナルカンドは海の中に有るんだよ?」
オニオンのごもっともな意見に、現実に引き戻された。
「そ、それは〜…」
どうやら、ヴァンが劣勢であるらしい。
と、今まで黙りこくっていたクラウドが突然、懐をゴソゴソ探り始める。彼の手の平の上に現れたものは淡く輝く紫のマテリア、実に三つ。更にはマテリア穴の空いた腕輪。こちらもやはり三個。
「どうしたんだよ、いきなり…」
「『せんすい』のマテリアだ。これが有れば、水中でも息が出来るようになる」
何でそんな物を持ち歩いているんだ、とか何故三つなんだ、とかツッコミ所は抜群だが、要は大人しく行ってこい、ということだろう。決して逝ってこい、ではない筈、うん。
「……バッツ、ジタン、一緒に来てくれないか…?」
何ともチキンな発言だが、初心な彼では致し方ないか。
バッツは「ああ、良いぜ!」と快諾したが、もう一方は違った。
「行ってやりたいのはやまやまなんだけどさ〜……、水中だけは絶対ヤダ。断る」
更には追加でキシャー、威嚇しかねない勢いだ。
恋愛知識及び経験豊富なジタンが駄目、となると後は誰が良いのだろう。フリオニールと同じく恋愛下手なクラウドとスコールは目を逸らしているし、存在自体が少々特殊であるライトに恋愛関連の知識が有るとは思えない。これ以上ティナを巻き込むとオニオンが怒るに違いないし、その彼も真剣なアドバイスとなると詰まるだろう。自分自身の恋愛が終わっているカインに聞いたところで勝手に落ち込んでいくだけ。ヴァンとセシルは始めから論外。特に後者。恋愛に関しては最高の勝ち組の一人の筈なのに。
となると、
「私が行こうか、フリオニール」
「是非そうして欲しい、ライトニング」
自分から名乗り出たライトニングに決定。多分他の面子よりは頼りになる。
「因みに、恋愛経験は?」
「無い。私は生まれてからずっとセラ一筋だ」
……頼りになる、筈だ。うん。
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