からかう
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バレンタインデー。女性が男性にチョコレートを贈る日。アメロッパでは立場逆転、男性が女性に花束を贈るのが主流だ。
そんなどうでもよいことを考えながら、足元に溢れるとあるデータ群にうんざりする。言わずもがな、チョコレート。現実世界での流行は大概電脳世界にも流れ込むのだが、まさか自分が巻き込まれるとは思っていなかった。
『随分面白いことになっているな、ブルース』
「炎山様も、人の事は言えませんよ」
『毎年だからな。もう慣れた』
「……」
トラック一台分のチョコレートは、今年も社員全員に配られるのだろう。理由は単純、一人ではとてもではないが食べ切れないから。
ちゃっかりより分け済みの本命チョコレート群(確かCFメンバーからのもの、の筈)をノートパソコンの横に置いて書類処理を始めた主を怨みがましく睨みながら、自分もまた足元を茶色に染め上げている原因のデータ群共を処理していく。ったく、こんなに贈られたって困るんだ。
心中で愚痴りつつ山を減らしていく。と−
コロリ、山から落ちてきた青い箱状のデータ。
(何だ、これは?)
周りに散在する茶色の小山とは違うデータ形式。何だか気になるので送信元を探る。
探ったその瞬間、後悔ゲージはMAX。
(ろ、ろ、ロックマン!?)
何でアイツが、何でアイツが、もう一つついでに何でアイツが。大事な事なので三回言いました。…とか考えている場合か、俺!
ロックマンは確かに大事な戦友だ。だからといって、バレンタインに何かを贈られる程の仲、というわけでもない。最近では同性間でチョコレートを贈り合う、いわゆる「友チョコ」というのが流行っているらしいから、何で男男間で、とは言わないでおく。
何のつもりだ、ロックマン。思いつつ、取り敢えず蓋を開けた。
パッコン!
「〜〜っ!」
顔面(特に鼻周辺)に走る痛み。何が起きたと言うのか−
少しばかり割れてしまったバイザーの隙間から除く黒曜石の瞳が、床に落ちた箱の中身を確かに捕らえる。びよびよ揺れるバネと、その先の握られたパンチンググローブ。世に言うビックリ箱。
(…罠かっ……!)
何と子供染みた。…引っ掛かった自分も自分だが。
『やあ、久しぶり、ブルース』
「!?」
何処からか響くのはロックマンの声。
『此処だよ、此処』
「………」
直ぐに分かった。グローブだ。音声送受信機能でもついているのか、ビックリ箱のクセに。
『どうだった、僕からの素敵なプレゼント』
「最っ悪だな」
『ありがとう、最っ高の褒め言葉だよ!』
「……!」
この、人(ナビ)をおちょくった態度。間違いなくロックマンだ。
神経に値するプログラムを逆撫でされているかのような感覚。しかし、キレれば相手の思う壷。ここは我慢の一手。
『まあ、冗談は此処までにして。今日ってバレンタインでしょ?僕もチョコレート欲しいなあ、君から』
「何故俺が!大体、図々しいぞ貴様。人には変な物贈っておいて」
『あ、くれなかったら明日も明後日もその次の日もずーっと贈り付けてやるから、ビックリ箱』
「………嫌がらせか、どっちも」
『当たり前じゃない。それとも何、あの箱が僕から君への愛の告白だとでも思ったの?そんなの絶対有り得ないね、ロールちゃんにだったらともかく。何で君みたいなヘタレなんかに告白しなきゃいけないの』
少しも変わらないトーン。
…もう良い、これ以上話していたらどうこっちを抉ってくるか分かったもんじゃない。諦めたブルースはふと思い付く。
足元のチョコレート群。何個かの山に分けたこれの内幾つかの山を纏めて贈れば、あの青いナビの人も無げな振る舞いをちょっとは止められるか。
『あ、女の子から君への贈り物を使い回したり、なんて失礼な事はしないでよね。あくまでも君の手作りないしは買ってきた物しか受け取ってやらないから』
「…………」
『何をしてるんだ、ブルース』
「なっ、何でも有りません、炎山様!(ロックマンの嫌がらせでチョコ作らされていますとか、言えない!!)」
『?』
11/02/10
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別にロク→ブルじゃ無いです。純粋に嫌がらせです、ロクの。
バレンタインなので甘いのでも書けば良かったんでしょうが、最近暗いのばっか書いてた反動でこんなのに。来年は甘いの書く(かもしんない)ので許して!