負けず嫌いは明日に吠える−1
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目の前にはユラユラ揺れる金の尻尾、少し視線をずらせば楽しげに輝く鋼色の瞳。
(どうして俺が付き合わなければならないんだ?)
確かに、フリオニール達よりは自分の方が、この二人と行動していた時期は長い。従って、二人がやや向こう見ずがちであることをしっかり把握しているし、面倒事にいちいち首を突っ込みたがる性質も知っている。
だからといって、何故俺が−
「一番のお宝、見付けるぜ!」
「スコールもそれっぽいの見付けたら教えろよな!」
「…………ああ」
…何だかんだで悪くは無いと思っている辺り、自分はお人良しなのだろうか。
薄暗い森の中、道とは言い難い道を走り出したバッツとジタンを、苦笑しながらスコールは追い掛ける。
事の始まりはジタンのこの一言。
「勝負は俺の勝ち−だな!」
アプリコット色に輝くクリスタルを堂々と掲げ、踏ん反り返ったジタンに対し、敗北を突き付けられたバッツは「負けちまったかぁ」と呟きながら青々と広がる草原にころり寝転び、そのまま伸びる。彼の手には蒼と藤紫に光るクリスタル。
彼等の勝負−「クリスタルを手に入れるのはどちらが先か」という競争のことはスコールも知っていた。何せこいつら、目の前でそれを開始したのだから。
軍配はジタンに上がった。彼がクリスタルを手に入れた瞬間を見た訳では無いが、クリスタルを手にしたばかりのバッツの元に彼が駆け寄って来た時、彼はそれを確かに手に持っていたのだ。
「ジタン、もう一回!もう一回勝負してくれよ!」
「別に良いぜ。…ああでも、ライトさん達と一回合流してからの方が」
「よっし!今度こそ俺が勝つ!」
(……お前はもう少し、人の話を聞いたらどうなんだ?)
すっかり蚊帳の外と化したスコールは、銀に鋭く輝く己のクリスタルを弄びながら心中で一人ごちる。
「スコール!お前も来いよな!」
「……は?」
「今ライトさんに連絡したんだけどさ、誰かもう一人付いて行くなら良いって許可貰ったんだよ」
「………」
何を考えているんだ、光の戦士。
それ以外に思考する間も無く、ポケットに突っ込んでいた携帯(クラウドから皆に渡された)が鳴り始めた。
正直、出たくない。出たくないが、…出るしかない。
「……もしもし」
『ああ、君か』
「……何の用だ、ライト」
『先程、ジタン君から連絡が有ってな。私としては一刻も早くコスモスの元へ戻って欲しいのだが、モチベーションを下げるのもどうかと考えたんだ』
「……俺はお目付け役、ということか」
『君なら適任だろうからな。…私は引き続き、クリスタルを探す。後は任せた』
「なっ…」
プチッ。ツー、ツー、ツー…
(……だからアイツは苦手なんだ…っ!)
今なら携帯を握り潰せる気がする。確実に。
「「スコールー、置いてくぞっ」」
「………」
かくして、お宝探し第二ラウンドが始まったのである。
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