27.約束なんだ
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エックスの白い手の平から、淡い水色の光の粒子が零れ落ちる。

「しっかり、しっかりして下さい…」

腹の刀傷を癒しながら。彼女は呻く男に何度も何度も、必死で呼び掛けて。

その傍らで、油断無く周囲を見回し、警戒している青年はゼロだ。−二人は世界を旅して回っているのだ。この戦時下の中、これ程の物好きもいないと、ゼロは自身達のことをそう思っている。

周囲に転がっているのは、百を越える死体。そう、死体だ。今エックスが必死で治療している男だけなら救えそうだと判断したから、そうしているのだ。

要するに、自分も彼女も、彼以外は見殺しにしたということで。

仕方ない。全てを救うなんて、現実的に無理な話だ。こんな時勢なら、尚更。

…ゼロはそんな風に、割り切っていた。全てに対して。

「……エックス、もう止めろ。…無理だ」

「っ、でも…!」

−後、後もう少し、こうしていたら。

…何度聞いただろう。自分のことでもないくせに、魂切るように、無言でそう叫んでいる。

だが、させる訳にはいかなかった。

「これ以上力を使えば、お前が倒れてしまう。…俺は、それが嫌なんだ」

「……」

我ながらずるい台詞だ。こう言えば、絶対止めると分かった上で言っている。

エックスは優しい、…優し過ぎる。だから尚更、止める必要があるのだ。

自分を犠牲にした上での優しさなんて、自分だったら絶対御免被りたいものだったから…。

「…分かったよ、ゼロ」

何処か悲しげな声とほぼ同時に、光の粒子が消える。

「運が良ければ、その男も生き延びられるさ…」

「……」

慰めの域にも達しない台詞。

諦めないことはエックスの美点だ。だが、それは時と場合によるもので、だからゼロはストッパーとしての役割をも果たしている。

運。そう、…運なのだろう。何もかも、最終的には。

己に言い聞かせる。

「ゼロ……。俺は、無力だね…」

「…」

「こんな無駄な戦いも終わらせられない。人一人だって、…救えない」

ギュッと握った拳が、震えている。

その拳を大きな手の平でそっと包み込みながら、ゼロは言う。

「エックス。何でもかんでも一人で背負い込むな」

「ゼロ…」

「−何の為に俺がいると思っている」

「……」

無言で寄り掛かってきたエックスの細い体を抱きしめる。

何の為について来た?−エックスの代わりに血を被る為だ。エックスの脆い理想を護る為だ。エックス自身を支える為だ。

「エックス。一つ、約束しろ」

「…何?」



「絶対、生き残れ」



血にむせ返る、この世界の中で。

「…分かった。……ゼロも、な?」

「……ああ」



そう、約束した。…叶わない望みだとは知っていた。





−そう、やがて。約束の、儚く終わる、時が来る。





10/12/21
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やっとお題一個消化…!RPG的パロッス。
四千前。始まりの時代です。エックス達は戦争末期の人物ですが。ゼロ視点っぽい感じなのでいずれエックス視点も書きたいですね
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