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夕焼けの近付く空は薄いオレンジに染まっている。
「今日は雲も無いから、綺麗に見える筈だよ」
「そうか」
ペンキが剥げかけている鉄製の欄干にもたれ掛かる炎山、少々身を乗り出すスバル。
「…で?どうしてくっついて来たの?」
「……」
流石に休憩の為だけではないとは分かっていたようだ。
溜め息をついた炎山は、青玉の双眸を落日に向ける。鮮やかに溶けるオレンジ。
「…まだ学校に馴染めないのか?」
静かな一言。虚をつかれたスバルの顔が曇る。
「……うん。やっぱり、ちょっと………恐い、かな?」
「…何が?」
「…年齢ごまかしてるとか、セイバーだとか、一杯あるけど……、一番は…」
「…混血種(ミキシム)だから?」
「……っ、…うん」
混血種に対する迫害は激しい。それまで仲良くしていた者達も相手がそうと分かっただけで、あっさり身を翻す。石を投げられ罵声を浴びせられ居場所を失う。後に待つのは果ての見えない孤独だ。
二人はその苦しみを知っていた。知っていたからこそ、今は安らぎを覚えているし、もう二度と戻りたくも無かった。
「…どうしたら良いのかなぁ…」
ぽつり、呟いたスバルに炎山はあっさり一言。
「別に。お前のペースでやれば良いんじゃないか」
いっそ投げやりにも聞こえる台詞に、スバルははっと目を見開く。…自分のペース?
思わず目を向ける。意思の強い青玉が飛び込む。
「…大体、世の中には光やエックスのような馬鹿がいるんだ。差別なんぞ関係無しに友好を築こうという馬鹿達がな。……お前を追い掛けているとかいう女も、その類なんじゃないか」
珍しくぼそぼそ呟く彼女の頬は僅かに紅い。もしかしなくても、励ましているつもり、なのだろうか。
「……そうなの、かなあ…?」
確かに、ルナは昔学校で孤立していたという二人−牛島ゴン太、最小院キザマロ−と平気で共に行動していた。…ん、ちょっと待て。炎山の言葉にほだされて、仮に彼等と打ち解けたなら、彼等と行動を共に行動する、ということか−!?
白金ルナは名前の通り、衛星みたいな少女だ。毎日毎日ついてまとってくるかもしれない。しかも色々口煩い。他二人も同様な訳で。…それはそれは大変そうだ。
「星川?」
「え、いや、何でも無いよ!」
適当にごまかしたスバルの耳に、それが聞こえてきたのは正にこの瞬間であった。
見れば炎山も同様のようで、僅かに頷いている。
『どうすんだ、お二人さんよぉ』
「…行ってみよう」
「ああ…」
二人は欄干から離れると、それの聞こえる場に歩き出した。
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