裏切り者。そんな言葉が心に浮かぶ。ぷかぷか、ぷかぷか。
あの子に抱く恋情は本物だ。けれど、一心同体の"影"が囁く。
お前の果たすべき目的は何だ、と。
(……分かってるよ)
両親に捨てられてからずっと、その感情だけを支えにして生きてきた。……今更、放り出す筈が無い。
ならばどうして、自分のことを「裏切り者」と、そう思うのだろう?
あの子も周りのヒトや精霊達も、僕を「仲間」だとして疑わない。それはそうだろう、今まで細心の注意を払いながら、そう思われるように行動していたのだから。警戒心の強いあの吸血鬼や死神ですら、僕を信じている。
もうすぐ、もうすぐ。計画を実行する時が来る。
そうなったら。彼等はどう思うのだろう。そう考えると、加える手が億劫になる。揺れ始めている、心が。
(僕は、)
どちらを選べば良いのだろう。復讐を望んだ過去と、あの子に恋した現在と−−
『そんなもの、決まってるんだろう?』
「っ!」
振り返る。雷の魔力を隠さず放つ、全く同じ顔、体駆の二人の少年。
計画の遂行を決めた時、"影"が契約した精霊。
「自分を捨てた両親が憎い。だから報いを与える。それだけのことだ、何を迷う必要がある」
「……」
シンプルでいて蠱惑的な台詞が染みる。心に沈澱した闇に。
「……そう、だね」
小さく小さく呟く。そんな様を見て満足したように、二人で一人の精霊が笑った。
(ごめんね、スバル君)
(やっぱり僕、君を選ぶことは出来ないよ)
The past is not thrown away to me.
(僕は過去を捨てられない)
−流星のロックマン:RPG的パロ