※混濁した記憶(EXE:FE的パロ)
2014/03/05 22:05
何処からともなく、泣き声が聞こえた。
振り返る。誰もいない。藍色の絨毯が延々と敷かれた廊下が長々と伸びているだけだ。
(気のせいか)
向き直して再び歩き出す。もう、泣き声は聞こえない。代わりに−−
「!」
裾野を引っ張られた。誰もいないはずなのに。
感覚は一瞬で途切れる。探しても無駄なのは分かっていた。だが、それでも頭を幾度か巡らせてしまったのは、犯人がどうしても気になって仕方なかったから。
「何なんだ………?」
考えても心当たりすら思い浮かばない。やがて彼女は思考も止めて、ただ前へ行くことにした。随分と長い廊下をひたすら、ひたすら、
(……出口は?)
何時になったら辿り着く?
ふとした疑問は、しかし長続きせず霧散する。
早く、此処から離れたい。ただその思いだけが、頭の中を占領して――
「……チ、サーチ!!」
目を開ける。何処と無く心配そうな主の表情が映る。
「何か、夢でも見たのか?魘されていたぞ」
「いえ、……」
上体を起こしながら、額を指で揉む。……思い出せない。アレ?
「何でもありません。大丈夫です、問題などありません」
「は……」
分かる。信用されていない。だが、一応の納得はしてくれたようだ。「一時間後に合同訓練がある、その準備だけはしておけよ」とだけ言って、主が部屋を出ていく。
(……何だったんだ?)
夢の内容など、目覚めを迎えれば残滓すらも残らないことが多いのだ。今回もそうなってしまったようだ。
何時もなら、さして気にはしない。
けれど、今回だけは、どうしても、気になって……
「まあ、いいか……」
思い出せないのなら、大したことではないのだろう。
そう判断したサーチはベッドから足を下ろした。
何処からともなく聞こえてきた泣き声は、聞こえなかったことにした。
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久々の更新。神鳥の夢
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空をとぶ5つの方法
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