※破壊衝動を抑える(EXE:RPG的パロ)
2013/10/19 18:41
時々、そんなことがあった。
「……」
今もだ。
ちょこんと置かれた、孤児院の子供達のためにと買われた大きな熊のぬいぐるみ。三人ぐらいならしがみつけそうな程の大きさで、さわり心地も悪くない。とても気持ち良い。
――引きちぎってやりたい。
太くて柔らかい腕をもぎ取ったら、それは沢山の真綿が溢れ出るのだろう。円らなボタンの瞳が印象的な頭を引き裂けば、あたかも生物の皮膚を切り裂く快感を味わえるに違いない。
――そんなこと、させるものか。
陰惨で無残なぬいぐるみの死体など、子供達に見せるわけにはいかない。それが彼等への大事な贈り物とあれば尚更だ。自分の勝手な欲一つで壊すなど、あってはならない。
大体。
(俺、そんなの)
したくなんて、
「光、そこで何をしているんだ」
「……炎、山?」
女性としてはやや低い声に振り返る。気配もなく近付いていたらしい死神の少女が、実に呆れた表情を浮かべながら立っていた。
「何処に行ったかと思えば……桜井がお前を探していたぞ」
「え、そう?」
「ああ。さっさと行かないと、面倒になるぞ」
「そ、そだな」
「……」
視線が痛い。気付いたのだろうか。
しかし、彼女の青玉の瞳は直ぐに外れ、コツコツと高い靴音を響かせながら歩き出す。
その後を追い掛けながら、熱斗は内心で、炎山に感謝し続けた。
−−−−−−−−−−−−
仕切りに何かを壊したいお年頃
お題配布元→
空をとぶ5つの方法
prev | next