※夕闇に惑う(X・RPG的パロ)
2012/12/31 23:37
冬の夕暮れは早い。訪れるのも過ぎるのも。
「終わったよ、二人共」
事後処理の書類をトン、と揃えながら、暇そうに携帯端末を操作しているゼロとアクセルに声を掛ける。と、二人はそれぞれ「やっとか」「待ってました」とでも言い出しそうな表情でソファから立ち上がった。
本来は三人で当たった任務の筈なのだが、当然のようにエックスが報告書を書いていた。だからそんな表情をされると、彼女としては実に複雑な気分である。二人共書類が苦手、というか嫌いなのは知っているが、だからといってするべきことを丸投げされるというのはどうにかならないだろうか。
「あ、そうそう。ゼロから聞いたんだけど」
「何?」
「この前の任務の日さ、エックス誕生日だったんだって?全っ然知らなかったんだけど、僕」
「あれ、そうだったっけ」
そうだったような気もする。何分、その日は任務に明け暮れていたから気付けずにいていたんだろう。
どうしてだかゼロの方が、自分のことをよっぽど知っているな。そう思いながら、彼女は苦笑する。
「忘れてたよ」
「そーんなおっちょこちょいさんに、僕らからのプレゼントがありまーす」
じゃーん、という擬音でもついていそうな大袈裟な動作。そして差し出される、細身のリボンと滑らかな光沢のラッピングペーパーに包まれた小振りの箱。
「これは僕から。んで」
「……」
無言のままそっと手渡された、細長い円筒を、受けとったエックスの表情は、心底意外そうであった。
「なぁに、嬉しくない?」
「……そんなこと無い。ありがとう、二人共」
言えば、アクセルは珍しく何の邪気も無いただただ子供っぽい笑みを浮かべ、ゼロは僅かに頬を紅に染めながらツンと顔を澄ます。
夕闇が窓ガラス越しに部屋を暗く静める中、エックスはふわりと笑う。今はただ、二人の優しさが嬉しくて仕方なかった。
(だけど書類の始末は別だから)
(ちぇー……)
(……面倒くさい)
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もう何日前だよ、という話。もう幾つ寝るとお正月な話にしろよとはつっこまないで欲しい
お題配布元→
空をとぶ5つの方法
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