※何かとっても眠い(RPG的パロ)
2012/03/16 22:22

精霊にとって、最も効率良く魔力を回復出来る手段は睡眠だ。

だから食欲よりも睡眠欲の方がずっと強いし、必要な睡眠時間が人間や妖魔より長いことも珍しくは無い。

だが。

(いくら何でも、コイツのは酷すぎる)

足元ですやすやと眠るサーチを見下ろして、ブルースは思わず溜め息をついた。

足をくの字に折り、腕を枕がわりにして気持ち良さそうに眠っている彼女に、多少なりとは緊張感があれど、警戒している様子は無い。

彼女は精霊王や三賢者に比する程の強大な魔力を持つが、自分達よりも魔術を使う際の消耗が激しいらしく、任務後にはこうして半日以上眠り込むことが多い。

半日以上寝るだけならまだしも、安全でさえ在れば何処ででも寝始めるから困る。この間はカップ形式自販機にもたれ掛かっていた。その前は中庭のベンチ。更に前には大浴場の脱衣所(流石にこれは、自分の目では確認していないが)。

「ったく……」

今日は研究棟とセイバー本部を繋ぐ渡り廊下。床に直で。ソファの上で、というのならまだ納得出来るが、何故床なんだ。

また一つ溜め息をつきながら、サーチの側に座る。壁がわりに嵌め込まれた、強化硝子越しに中庭を眺める。

春が近付いていることもあり、幾種類の花が咲いている。施設に保護されている子供達が、元気良く走り回って遊んでいるのも見えた。

「……そういえば、お前とライカも最初は保護対象者だったんだよな」

当時の子供達とは何もかもが合わず、孤立していることが多かったらしいが。生憎、自分が知っているのは自ら戦うことを志願する姿の方だ。

あの時の彼女は戦闘手段を本能で知っている武器精霊でありながら、ロクに交戦したことが無かったらしく、それ程強くも無かったのだが。

「一度はダークロイド達に見せてやりたいな、この姿」

彼等が恐れる「禁術」は、こんな風に安らかに眠るのだ。

勿論こんな姿を見せてくれるつもりは無い。今は自分だけのモノだから。

(後は場所さえ考えてくれたなら、最高なんだが)

ライカの命令は当然ながら、どうやら睡眠欲にも忠実らしい。これだけ近くに他人がいるというのに、目を覚ます様子が微塵も無い。

それだけ心地好いんだな、と考えながら、思っていたより少し小さな頭を撫でる。柔らかい髪が気持ち良い。

「……しかし、眠くなるのも分からんではない」

何せ此処は、程良く日が当たる。空調も常に春の中頃の気温程度に調整されている。そして何より邪魔者がいない。

(たまには寝床以外で寝るのも、悪くは無いだろうな)



「……で?何でこんな所で寝ているんだ、この二人は」

「俺が知るか」

「……そりゃそうか」



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何処ででも寝てしまうサーチと釣られて寝てしまったブルースの話

お題配布元→虚言症

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