※始まりの音(EXE:パラレル)
2011/05/20 01:07
ズキュン。
目の前で何かが転がり落ちた。銃弾。もう何千回目だろう。
「そこにいるのは分かっている。『出てこい』」
スキルを使って命じれば、モミの木から飛び降りた影一つ。
オレンジの髪に深紅の瞳。全体的に細身の青年。その腕と手に抱くは古い型のライフル。銃口からは硝煙が上がっていた。
ぼんやりした瞳のまま、青年はまだ冷めていないであろうライフルを構えようとする。
「『止めろ』。…そんな物ではどのみち、俺を殺せはしない」
『命令』すれば、青年はやけにあっさり凶器を下ろした。…少しは抵抗があってもおかしくは無いのだが、どういうことか。
赤い瞳を見る。何処か遠くを見詰める、ぼんやりした目。正気を失った者の。
(…暗示をかけられているのか)
そこまでして俺を殺したいのか。無駄骨だというのに。
自身の特異性を熟知している少女−ライカは溜息をつくと、突っ立ったままの青年に近付く。額に指を置く。
「解」
たったその一言が、青年を呪縛から解放した。
ふっ、と目を閉ざした青年が柔らかな芝生に倒れ込む。やがて聞こえた安らかな寝息。
「…さて、どうしたものか」
どう転ぼうが面白くなるには違いない。
不老不死の少女はくつくつ笑うと、寝息をたてる青年を抱き上げた。
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暗殺者サーチと謎の少女ライカ。何と無く思い付いたパラレル話
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