※知りたいこと(TOG:ED後if展開)
2012/03/07 21:42

随分長い間、自分は眠り込んでいたらしい。

目にした景色には全く見覚えが無く、どころか眠る前のことが殆ど思い出せない。傍らに置いた武器が何なのかと、それを扱う術は不思議と分かっているのだが。

「お姉さんって一体何者?魔物……じゃない、よな?」

「そうだと思う」

「でも人間……じゃなかったら何だよ、って話だし。うーん」

赤みがかったチョコレート色の髪に、蒼色の潜む琥珀の瞳の少年がしきりに悩んでいる。雰囲気としてはやんちゃそうで、実際自分にこんな問い掛けをするまでは元気良く走り回ったり、武器に見立てているらしい木の棒を振り回して遊んでいた。

(誰かに似てる、ような……)

誰だろう。思い出せない、分からない。

「あ、分かった!」

「…?」

「お前、『ソフィ』姉ちゃんに似てるんだ!」

言われた途端。ドクリ、と心臓が波打った。

(『ソフィ』……!?)

知っている。本能的にそう悟る。

『ソフィ』。何だか懐かしい音。遠い遠い昔に置き去りにしたような、そんな気がする、音。

「……?お姉さん、どうしたんだよ?」

「いや、何でもないよ。……」

気になる。『ソフィ』。

「ねえ、君。俺を、その『ソフィ』っていう人の所まで、連れて行ってくれないか?」

「別に良いけど……」

若干訝しげにしながらも、少年は頷く。彼自身、『お姉さん』を『ソフィ』に会わせたらどうなるのか、興味があるのかもしれない。

とにもかくにも、『ソフィ』に会うことが出来る。それで十分だ。

何故だか眠っていた柩から出る。寝かせていた剣を腰にはく。

「そー言えばお姉さん。名前は?」

「名前?」

「名前分かんないと不便じゃん。いつまでもお姉さんお姉さん呼ぶ訳にいかないしさ」

「……」

少し考えて、……天啓の如く閃く、思い出す。

「アスベル。俺は、アスベル」

「アスベル、って……俺とおんなじじゃんか」

本気で驚いている目だ。

(あんまり無い名前なのかな)

だから驚いているのかもしれない。

と考えたのが、アスベル少年から返って来たのは全く違うものだった。

「俺のひいひい祖母ちゃんもアスベルっていうんだ。ひいひい祖母ちゃんみたいになって欲しいから、俺にアスベルってつけたんだってさ」

「そうなのか。そのひいひいお祖母さんは凄い人なのか?」

「ああ!何たって、世界を救った人らしいんだぜ!」

「世界を?」

「そう記録に残ってんだ。家の記録」

「へえ……」

世界。きっと此処を含めた色々な場所のことだ。

そのアスベルという人は、彼の言う通り本当に凄かったのだろう。

「もう百年以上も前のことみたいだけどな」

「そうか」

百年。長いのだろうか。

「……とにかく、『ソフィ』に会いたいな」

「分かってるって。それじゃ行こっか。あんま遠くないし」

アスベル少年は木の棒をくるりと回しながら、歩き出す。その小さな後ろ姿を追い掛ける。

とにかく、『ソフィ』に会わなければならない。そして、

(……どうするんだ?)

分からない。とりあえず、『ソフィ』や世界のことを知りたい。

それから、アスベルという、自分とこの少年と同じ名を持つ女性を。知りたい。

そして、それ以上に。

(知りたい)



何なのかすら分からない、得体の知れない自分のことを。



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アスベルの完全if展開。
ラムダは休眠状態でも宿主の肉体に影響を与え続けるという俺設定。半不老不死みたいな感じ。そしてアスベル少年に関しては何も言うまい


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