ああ、この人は…(EXE:7ドラ2020パロ)
2011/12/27 01:16

硬い鱗に覆われた翼を広げながら、目の前の異形−ドラゴンは猛々しく咆哮した。

覇王の如く君臨する「ケダモノ」に対峙、手にした刀を構え直しながら、少女はポツリと呟く。

「…雑魚が、粋がるな」

漏れた言葉に宿るは、敵意以上の殺意。

瞬間、閃いた刃が、ブレスを吐く為に開かれた咥内を切り裂く。奇妙な声を上げながら、ドラゴンが苦しみ始めた。

「安心しろ。…直ぐに、楽にしてやる」

端正な顔に、禍禍しい笑みを張り付けながら。サムライの少女は長大な刀を思い切り振り上げた。

そして。

赤紫に染まったトウキョウの空。断末魔と共に、血飛沫が舞い上がる−


「炎山様っ、御無事で−」

這い寄るマモノ達をあらかた切り捨てたブルースは、一番の大物を相手にしている主の元へ駆け付け…絶句した。

最早何だったのかも分からない肉塊の上に立った炎山が、何度も何度も、刀を突き刺していた。息もしていない、身動きも取らない、ドラゴンの成れの果てに。

刃が勢い良く引き抜かれる度、欠けた鱗と桃色の肉が辺りに飛び散る。

「炎山、様……?」

青年の震える声が聞こえていないのか、彼女はただひたすら、同じ行為を繰り返す。

「……っふふ…あははっ…あっはははは…っ!」

けたたましい笑い声。狂気で歪んだ笑み。マモノよりもマモノじみた行為。

従者の怯えた視線に、彼女はようやく気付いたのか、ズブズブと刀をドラゴンの死体に沈めながら、ブルースを俯瞰する。

「なあ、ブルース」

平板な声音。先程までの狂気はなりを潜め、いや。

「俺は、どうしたら良いんだ?」

悲しそうな、いやそれも違う。やはり狂気。

「『こいつら』を殺すだけのガラクタにされた俺達は、」

一体いったいどうすれば、良い?

「なあ、ブルース」

問い質す彼女の口の端から、赤い赤い血が零れ落ちる。よくよく見れば、爪で切り裂かれたのか、脇腹にも長い傷が出来ていた。

普通なら動けなくなるような大怪我。にもかかわらず、彼女は何事も無かったかのように振る舞っている。

(……ま、さか)

「…く、無いんだ」

こんな大怪我してる。床に強く叩き付けられて、肋骨も何本かイカレた。内臓もきっと傷付いている。

だけどだけどだけど。

「もう、何も、痛く、無いんだ。…どうしよう?」

泣き笑いをしながら問い掛ける主を見て、ブルースはただただ、一つの事実を悟るしかなかった。

(ああ、この人は、)



(壊れてしまった、の、か)



−−−−−−−−−−−−−−−−
「もう何も、痛くない」

はさておき。さやか状態な炎山とどうしようも出来ないブルース。2020の公式漫画ホントこんな感じ。2020自体暗いしね…
7ドラ2020パロはもっと細かく設定を決めてるのでいつか上げると思う…よ、うん


お題配布元→雲の空耳と独り言+α

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