※所詮は幻、(EXE:RPG的パロ)
2011/08/07 20:01

足元には雪原が広がっていた。頬を思い切り殴り付けてくるものは吹雪。目の前には己の生家。

ライカは有り得ない光景を目の前にして、只溜息をついた。水晶色の瞳が憂いをたたえる。

「……何のつもりだ、伊集院」

無感情に問い掛ければ、黒い屋根の上が陽炎の如く揺らめき、やがてそれは伊集院炎山の形を成した。

彼女は蒼の瞳で、自らの紡ぎ上げた幻術に捕らえた吸血鬼を見下ろす。右手で大鎌の柄を弄びながら。

「別に。反応を見たかっただけだ」

「……」

思わず舌打ち。どこぞの犯罪者達より性質が悪い。

血濡れの生家。両親の殺された忌まわしい場所。

苦しくない筈が無い。表に出したくないだけだ。特に、この女の前では。

「幻術が効くようでは、まだ立ち直れてはいないんだな」

「……黙れ」

突如、吹雪が止んだ。屋敷もゆらゆら、儚く消え始める。代わりに隙間から見える、現実。

「失せろ!」

叫びながら、鎖鎌を炎山に投げ付ける。鎖が炎山の細い左腕に絡み付いた。

途端、大鎌が形状を変える。鈍い光を放つ刀。自分を捕らえる鎖を睥睨した彼女は表情を変えぬまま、勢い良く得物を跳ね上げた。

裁ち切られた鎖。掻き消える幻覚。それは刹那。

広がる訓練場。それまでの光景が見えていなかったのか、ブルースとサーチが何か叫びながら、それぞれの主に駆け寄る。

「ライカ様!御無事ですか…!?」

「……、ああ」

サーチの無機質かつ端正な顔が心配そうに歪んでいる。それ程おかしなことになっていたのだろうか。

ぼんやり、考える。ガチャリ、握り締めていた鎖鎌がモノトリウムの床に滑り落ちた。

鉄の刃が固い音を立てて床に突き刺さる。けれど、誰もそれに気付かない。

まるでそれは、先程までの蜻蛉のごとき幻の如く。



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ライカと炎山。こんな関係。
大鎌と鎖鎌ってお前ら鎌好きすぎだ…(炎山最終的に刀使ってるけど)


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