※在りし日の(EXE:RPG的パロ)
2011/07/18 20:08
物質精霊王セレナードは何の変哲も無い白亜の壁を眺めていた。ともすればただの奇行を注意する供はいない。自らの城中だ、今は必要無い。
数分か数時間か。時の流れた直後、彼は目前の壁を撫でた。
途端、壁が空気に溶けるように消え、代わりに方陣が刻まれた古ぼけた木製の扉が現れる。特に驚きもせず、セレナードは扉を開けると、その身を向こう側に滑らせた。
広がる殺風景な広間。朽ちることの無い幾本の柱に支えられている。最も奥の壁に目を向けると、先のちぎられた銀の鎖が淋しげにぶら下がっていた。
ここは封印の間。十三年前まで、この物静かな部屋にはとある精霊が封じられていた。
彼女は誕生直後に"禁術"をその身に埋め込まれ、己のあらゆる時を凍らされた。"禁術"に侵食されていく彼女を誰もが恐れた。いつ暴走するか分からない中、王といえど個人的な意見を押し通す訳にもいかない。結果、彼女を封じざるをえなかった。抵抗は、…無かった。全然。
ただ、ぼんやりした無表情で、遠くを眺めているだけで。
(……今も、お前はそうなのだろうか)
たった一人、彼女を見付けてくれた子供も、残酷な現実に晒されておかしくなってしまったと、親友に聞かされた。そして、彼女も。
…はた、と気付く。何故これ程気にかけているのか。自分でも分からない。本来自身の庇護下にあるべき存在だったから、だろうか。
(……いいや、違うな)
そんな風に思うのもまた、謎で。
ただ、彼女と子供がこの忌まわしい箱庭で穏やかに過ごしていた、在りし日が妙に懐かしく思えた。
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何と無く思い返すセレ様。書いた本人だが、セレ様までサーチラバーになられても…
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