囁く黄色 | ナノ






(現パロ)
(キッド視点)





いつもの交差点で会っていたあの男は
今はどこにいるのだろうか。

いつも薄汚れた服を着て常にフードを被り、誰にも素顔を見せないような、見せたくなさそうな風貌のあの男。

たまに顔をみようとフードの中を見つめていたら、チラっと目が合ったこともあったっけ?

しかし、それだけ。
目が合っただけで、他には何もない。
何もないんだ。


ある日の交差点。
俺は走っていた。無我夢中で。
バイトの先輩に買い出しを頼まれて、ダッシュで帰らなければ間に合わなかったのだ。遅れたら罰ゲームとして女装だとよ。バカじゃねーの?
でもまぁそんなこんなで、俺は全速力で駆け巡ったんだ。白と黒の地面を。この二本の足で。


そしたら赤信号だ。
早く車が通らないものだろうか。
俺は両手に買い物袋をぶらせげてイライラしていた。

ふいに、向こう側を見ていたら。
見覚えのある姿が。


黄色の薄汚れたパーカー。そしてフード。そして猫背で常に下を向いて歩いている。
そう、あの男が。



まじかよ。こんなときに。
俺はとりあえず急いでいたから。青信号に変わった瞬間一番に走りだした。


向こうから、あの男が近づいてくる。重い足取りで。
ちょうどすれ違う寸前だった。












「おい、いっつも見てんじゃねーよクソガキ」





俺のこと好きなの?






大きくはない。しかし小さくはない、しっかりとした声で、あの男は言った。



なんなんだあの男。
ますます興味が湧いてくる。



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20130330