FF夢


 3-08






 [ν]εγλ‐0007年 04月23日 天気・晴れ

ここをを出発してから、3ヶ月くらい。
ゴールドソーサーを出発してからは大体20日間が経過した。
私とささみは、再び彼女の故郷に足を踏み入れました。




「はぁ・・・ついに帰ってきた・・・アイシクルロッジ!」
「クエエェェーッ!」

「クエッ!」

私とささみが感極まったように声を上げると、それに応えるような鳴き声が響く。
声の方を向くと、黒いチョコボが元気よく駆けてくる。その背には、黒髪の男の人。

クジャとザックスだった。

事前に電話しておいたからか、この付近で待っていてくれたようだ。
久しぶりに見るあの笑顔に、段々と涙腺が緩んでいくのがわかった。

ザックスはクジャの背から飛び降りて、私の前に立った。


「奈々!よく無事に帰ってきたなお前!」
「ザックス・・・! う、う、うわああああん会いたかったよー!!」

相変わらず、太陽のようなあたたかい笑顔を浮かべるザックスを見ていたら、とうとう今まで溜め込んでいたものがあふれ出したようで、涙が止まらなくなってしまった。
ザックスは笑いながらぎゅうぎゅう抱きしめてくれる。本当に家族みたいなあたたかさだ。


「おかえり、奈々」
「だだいまぁ〜!」

鼻水で鼻が詰まり、その上涙声のため、まともに話すこともできない。
ザックスはぶっ、と吹き出しながら私の頭を撫でてくれた。

「ぶっ・・・すっげえ鼻声じゃん」
「だって、さみしかったんだもん」

ズビ、と鼻をすすりながらささみとクジャの方を見る。
どちらも再開を喜び合っているようで、向き合ってばさばさと羽をはばたかせていた。


優しく頭を撫でるザックスの手はそのままに、私とザックスはロッジにある宿屋に帰ってきた。

受付にはいつかのようにダリアさんが座っていて、ウォールマーケットの2人を思い出す。
すると一度収まった涙が再び滲んできた。

「おかえり奈々!無事に帰ってきたのね!」
「ただいまダリアさん!」

こちらに気づいたダリアさんが、受付テーブルから離れて私に走り寄ってくる。
ぼけっとその姿を見ていると、私の体はダリアさんの腕の中に納まっていた。
ふくよかな胸に癒されながら再会の挨拶を交わす。

「心配したのよ!・・・まぁ、元気そうでよかったわ。貴方たち2人で話す事もあるでしょう?どうせ誰もいないし、そっちのソファ使うといいわ。お腹すいた?シチュー持ってくるわね」
「ありがとー・・・」

ダリアの美味しいシチューに思いを馳せながら、ザックスと2人でロビーのソファに座り込む。
久しぶりに本当に息を吐ける時間に、気が抜けていくのがわかる。


「しかし・・・随分傷だらけになったな・・・」
「んー、あはは、そうだね。サバイバルだったよ」

3ヶ月あまりの一人旅に思いを馳せて、その間についた傷の数々を眺める。
ザックスの言った通り確かに体中傷だらけだったけれど、旅の中では気にする余裕も無かった。
今になって全身の怠さと痛みがぶり返してくる。

「ま、何にせよ元気に戻ってきてくれて俺は嬉しいぜー。どうだ、一人旅の感想は」
「色々ありすぎて、何から話していいのかわかんないよ」
「安心しろよ、今日は徹夜で聞いてやる!」
「私は寝る!」

その一言で会話は一旦終了し、丁度良くダリアさんがシチューとパンを持ってきてくれた。
今日はベーコンとトマトのスープも一緒だ。

「いっぱい食べて温まって、ゆっくり眠るのよ?お喋りは明日にしましょう」
「優しさが沁みる・・・」
「悪かったなー自己中で!」
「そこまで言ってないよ。元気になったら夜通し語るからね!」
「おう!」


一瞬で機嫌がよくなったザックスも、ダリアさんが持ってきてくれた膳に手を付ける。
「いただきます」と呟いてからシチューを口に運ぶと、以前と変わらず優しい味がした。




***




夕食後、私とザックスは自室に帰ってきた。
部屋にはクラウドもいて、相変わらず意識は無いけれど顔色は悪くない。

だけど、今までの疲れが一気に出た上にあたたかい食事でお腹を満たしたのだ。
眠くないわけが無く、既に意識が朦朧としていた。


「んー・・・待って、私の、日記・・・」
「日記なんか書いてる場合じゃないだろ?先に寝とけって」
「ちがうよー、ザックスに預かりもの・・・」
「俺に?誰からだよ。」

不思議そうな顔をするザックスに日記帳を取ってもらい、フェア夫妻から預かった封筒を渡す。
妙に分厚い封筒を見て怪訝そうな顔をするザックスだったが、宛名の字を見た瞬間に目を見開いてそれを凝視した。


「これ・・・」
「ゴンガガで・・・宿屋、やってなくて・・・優しそうなおじさんとおばさんが、泊めてくれたの・・・その人たち、ザックスのお父さんとお母さんだったみたいで、手紙、預かっちゃった」
「親父と、母ちゃん?」
「ん・・・すごく優しかったよ・・・」

ふわりふわりと意識が不安定な状態で、何とかそれを伝える。
ザックスは封筒を握ったまま、そこにぼうっと立っていた。


私はそれを確認するだけで精一杯で、次の瞬間には意識が真っ暗になっていた。






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