みにくいアヒルは言いました ラグシェ


「醜いからこそ美しいのさ」

そう呟いた息絶え絶えの山賊の胸に闇の剣を一刺しする。呻き声を漏らしながら、山賊は次第に既に虫の息だった呼吸をゆっくりと繰り返し息絶えた。
肉を貫く透明な剣を伝う血は剣を汚し実に汚らわしい。しかし艶めく赤はたまらなく美しい。
なるほど。シェゾは山賊の先程の言葉を思い出し感得する。

「何故殺したんだ」

山賊の死体から流れる血に見とれているシェゾに、すかさず後ろで今に至るまでの様子を見ていたラグナスが駆け寄った。シェゾは視線だけラグナスに向ける。

「そんなの決まっているだろう」

魔力以外はいらんからだ。
そう吐き捨てシェゾは山賊の胸から剣を引き抜き、血に染まる闇の剣を魔法で空間に消した。きっと次剣を出す時にはまた煌く透明の美しい剣に戻っているのであろう。

殺すまでしなくても良かったろうに。ラグナスは哀れみの視線を山賊の死体に送る。

「君は愚かだな」
「お前の方が相当愚かだろ」

ラグナスの吐いた卑下する言葉をシェゾはオウム返しにする。
そして間もなくぎら、と碧眼の双眸が光の勇者を捉えた。

「正義の善人ぶって、愚かでただの阿呆としか言いようがない」

クク、と口角を上げにたつくシェゾの頬をラグナスは思い切り殴った。罪悪感だなんてあったものじゃない。本心で、初めて人を殴った。僅かに残る拳の熱は決して良い気持ちにはさせない。

不意のことにシェゾは少しよろめいたがすぐに体勢を元に戻した。
しん、と静まり返る空間。実に気味悪く居心地が悪い。
その気味の悪い静寂を先に打破したのはシェゾだった。

「大体、悪いのはこいつだろう?アルル達に手を出そうとしていたんだからな。それをお前がもだもだともたつくから俺が殺してくい止めてやったんだ。魔力もついでに奪って。一石二鳥なうえ良いことこの上ないだろうが」

突然殴られたにも関わらず、シェゾは動揺する様子も無く落ち着いた声音で言葉を連ねる。

確かに。シェゾの言っている事は正しかった。正論だ。でも、

「でもっ・・・・・」

再び無音が響く。シェゾは何を言うまでもなくただ続きを待った。

そして散々間をおいて、ラグナスは小さく口を開く。

「易々と、人の命は奪ってはいけない」

瞳に涙を溜めて声を落とす光の勇者に、深い闇を潜める魔導師はやはりお前は愚かだなと蔑んだ。




それでも突き抜ける程に青い空




*

なんかシェゾが嫌な奴ですいません^O^;
魔導シェゾならこのくらいひねくれてても問題ないかと思って・・・w
はあラグシェ萌え〜と思いながら書いてたのになんだこれ・・・もはやCPですらない・・・^^^^




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