茶屋「香春」


二階建ての店が連なる風情のある建築物のなか、一際立派な行灯が下げられた店『香春』(かわら)。


夕日も沈み、紅殻格子(べんがらこうし)から漏れる光が道を照らす。


『なんだよ、いつも図々しく平気で…って。忘れてた、由良おいで。』


店の前で幻想的な外装をマジマジと見ていたら、遠慮していると思われたのか手を引かれて中へと入って行った。




『川原、群青の間をつかうぞ。』

『あいどうぞ。空いてます。』


川原(かわら)と呼ばれた女が三味線を持って立っていたので、お辞儀をして「お邪魔いたします。」と上がろうとしたら、真っ青な顔して良と川原さんがこちらを見ていた。



怖いんだけど!外から敷居跨ぐにも足をあげたまま入れないんだけど!



茶屋の入口。三人の呼吸は止まっている。

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