6-9・…おかえり。
「――――っるし!!!」
と、ようやく長いキスを終えるとニコニコと笑う紺の顔が目の前にあった。
『大家さん、ただいま!』
「あんた・・・!」
『って何!?目が片方つぶれてるし!なんか体痛いんだけど!えっ!?何このお腹の傷!こんなに酷かったっけ!?』
「・・・こぉおおん?」
『うっ!?』
来る!何かすごいのが来る!?
「・・・おかえり。」
『え?あ、うん。・・・ただいま・・・。』
ブスッとしてはいるが、鉄扇はないみたいだ。
「何よ。」
『ううん。あ、そういえば約束守ってくれてありがと。』
「!?あんた憶えてるの!?」
『妖だから、あっという間だったよー。』
ニコッと笑うと百花が泣きそうになった。
『大家さん。いや、百花。60年前から大好きだよ。』
そういって抱き締めた。
「ひっ…ぅ。知らないわよ!勝手に約束なんか決めて!守るなんて言ってないからね!あと部屋の修繕費と家賃二倍!迷惑料もらって鴉丸と二人で遊びに行くんだから!」
『えっ?二人で!?ダメー!』
「知るか!・・・心配かけるな馬鹿ぁあああ!うわぁあああん!」
―――――――――
「やれやれ。二階まで丸聞こえだっての。」
二階一号室
矢田鴉丸。
そろそろ自分の店持っても良いかなと思った春だった。
――――――――
『百花はね、きっと俺の事好きだよ、か。』
森の中、月明かりに照らされた紺が千枝から伝えられた未来の自分の言葉を呟く。
ずっと先で出会う愛しい人を思いながら。
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