6-8・じゃあ、またね。


その頃。

過去の山下家では。
『千枝さん、これはここで良い?』

紺は雑用をしていた。 
といっても千枝が家の周りに作った悪霊用の結界を補強しているのだが。
紺がおとなしいので遠ざかっていた悪霊が山下家に近寄り、あの誰にも懐かない紺が!?と森の動物達も見に来る始末だ。 

補強も終わり、千枝がいる屋敷の縁側にこしかける。
『俺って・・・。昔は嫌われていたんだもんなぁ。反省〜。でも今の俺が未来にとんだ時に百花のおかげでわりと人が好きになったんだよ。(作家になってひきこもってるけどさ。)』


「へぇ。私の孫がねぇ・・・。良かったわ、私が息子を産めることがわかって。」

『うん。名前は豊!性格は千枝さんに似てるかも。でも、霊感は少しだけ。』

「それも良かったわ。その方が幸せだから。」

『そう、かなぁ。千枝さんはやっぱり幸せじゃなかった?』

「そうね・・・。でも、紺がこうやって仲良くしてくれたのはとても幸せなことだわ。」


『へへっ。そう言ってもらえると嬉しいや。』

「ねぇ、紺は百花のこと好き?」

『えっ・・・?』

「もし、百花に人間の伴侶が現われても、貴男は大丈夫?」

『・・・。わからない。』

「そう・・・。」


千枝は紺の頭を撫で、微笑んだ。

『『時間なんて止まれば良いのに・・・。』』

過去と未来の紺はつぶやいた。

『さて、と。千枝さん、僕は帰ります。多分この直後に大号泣しますので伝言してください。百花は――――。』


「まぁ、そんな事言っていいのかしら?」

クスクスと笑う千枝の顔をみて安心する。

『じゃあね、千枝さん。大好きだよ。』


―――――――――

「・・・紺。」

百花は何かが起こる気がして紺を見た。 

『百花、俺帰らなきゃいけないみたい。』

自室から持ってきた白いシャツと、灰色のズボンを履いていた紺が悲しそうに笑った。

『百花・・・。俺帰りたくない。』

すぐにでも泣きだしそうな声だ。 

「紺。大丈夫、大丈夫だから。また会えるから。」

『わかってる。でも、今の君に会うまでが長いよ・・・!』

「何言ってんの。妖には短い時間じゃない。」

『そんなことない!』

紺は百花を抱き締めた。 

『・・・じゃあ約束。何か約束しようよ。』

「約束?」

百花は首を傾げた。 

『百花、俺以外好きにならないで。』

「は!?」

『約束。』

「ちょ!?」
っと待ちなさい!と言おうとして、また口を塞がれた。

涙をながしたままの紺に。

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