6-6・ツンデレ?
「行ってきます!」
と元気一杯に出ていく少年の姿の護を見送ったら、なんだかどっと疲れてしまった。
先程護が持ってきた薬壺を見ると軟膏が入っていた。母さん、異変に気づいたなら助けてくださいよ。
百花は指に掬い目以外の傷に塗ってやる。
特に酷かったのはわき腹だった。血はもう止まっているが深い爪痕がある。
「(痛くないかしら?)」
と、まるで自分の傷のように顔をしかめながら軟膏を塗っていく。
『ぎゃぅっ!』
一ヶ所、物凄く痛む場所があったらしい。
「紺、大丈夫?」
ふー、ふー、ふー、ふー、と荒い息を出している。
百花は軟膏を塗るのを止めて紺の目を見た。
『お前・・・。』
「百花。私は百花よ。千の枝に咲いたモモの花。良い名前でしょ?」
ふー、と最後にため息に似た息を吐くと、紺は目をつぶった。
『・・・ああ。
「ご飯・・・食べられる?」
『身体中痛い。食べさせろ。』
「はいはい。」
作っておいた小さないなり寿司を持ってくると、起き上がろうとしている。
「こら、起きちゃダメだって。」
大きな狐がふん、と鼻をならす。
「蛇の匂いがし「気のせいよ。」
護・・・!絶対かえって来ちゃダメー!と内心思った。
「それよりはい、いなり寿司。」
「いなり寿司?何だそれは。」
「へ!?あんた大好きじゃない。」
「?そうなのか?食べた記憶はないが。」
紺はお稲荷様じゃないから、まだ食べたことがないらしい。
百花の膝に頭を乗せると、あーん。と口を開けた。
「・・・何をやってんの。」
「・・・起きちゃダメなんだろう?」
「・・・。」
夢ではこんなに甘えたりしなかったはずだが。
「なんだ。人間の姿が「ダメ。絶対に。」」
今人間の姿になったら裸族決定だ。それは見たくない。
「はい、あーん。」
思わず自分まで口を開けてしまう。
「!」
「?」
がばり!といきなり起き上がり、直に皿からいなり寿司を食べはじめた。
「・・・びっくりしたぁ。」
「なんだこれは!こんな美味しいものがあったのか!」
肩をつかまれ押し倒された。
「あぃったぁ!?何する「もっと作って!」」
「・・・え。良いけど。」
よっぽどうれしかったらしい。犬みたいに顔を舐めてきた。
・・・千枝ばぁちゃん、今私は顔中よだれまみれです。
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