6-5・本当の優しさ
「鴉丸!なぜこんな事を!?」
百花は紺を抱き締めて降りてきた鴉丸を睨み付ける。
「何故?こんな事?当たり前だろう。俺は怒っているからな。そろに馬鹿狐はそれくらいしないと黙りはしなかっただろう。」
『・・・私も鴉丸に同意する。』
「縞っ!?」
しばらく沈黙が包んだが、百花は黙って紺を抱き上げようとした。
『百花、私が持とう。』
「・・・。」
何も言わず、涙をぼろぼろとこぼすと、縞に任せる。
「百花。」
鴉丸は百花に呼び掛けた。
「・・・何。」
「紺が戻ってきたとき、お前を傷付け、自分が無傷だったら紺は出ていく。それでも間違っていたと思うのか。」
「・・・わからないわ。
でも。鴉丸、ありがとう。」
百花は鴉丸を見ようとせず縞のもとへと走っていった。
「・・・やれやれ・・・。」
鴉丸は人間の姿になり、自室へと戻っていった。
縞に自分の部屋へ紺を寝かせてもらうと、心配する縞を「大丈夫」と言って帰らせた。
「馬鹿紺・・・。」
片目と胴体を傷つけ苦しそうに眠る紺の頭を優しく撫でる。
「百花ー。これママが作った傷薬!」
護がにょろり、と口に茶色の小さな壺をくわえてやってきた。ママとは百花の母の慶のことだ。
「ありがとう、護。」
「きっとすぐ治るよ。」
「うん・・・。」
「僕はやく紺と遊びたい・・・。」
「う、うん。」
言えない。過去の紺は山で蛇捕まえて食べていたなんて。というか、うっかり今めざめたら護を滋養に良いからと食べかねない。
「ね、ねえ護。しばらく一成兄さんの所でお世話になっておいで。」
「えっ!?良いの?」
何故かお兄さん好きな護が一番好きなのは百花の兄の一成、次に紺だ。ちなみに鴉丸はタバコを吸うので吸ってないときだけしか近づかない。(蛇はヤニには弱い)
「そこのお菓子類全部持っていきなさい。」
兄の一成は大のスナック菓子好きなのだった。
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