尋ねられ
グジグジと泣き出した少年は、俺の胸倉を掴みながら顔を胸に寄せている。
ああ、俺への視線は強くなるばかり。
泣かしたの、俺なのかなぁ?
「なぁ、泣かないでくれよ。」
よしよしと、頭を撫でてみる。髪が長いからまるで女の子みたいだ。…顔を見なけりゃな。
顔はあれだ。連ドラで最近よく見る人気の若い男の子みたいだ。
可愛いという部類には入るが、確実に女の子ではない。
『ぐっ、由良は、ぞんなごど、じないっ!お前誰っ!?』
ようやく顔を上げた少年は、涙でぐしゃぐしゃで、主に赤かった。
「由良、京介。」
『京、介?俺の知ってる由良は、由良だけだ。』
あ〜はぁん?ちょっと理解できなかったぞ少年。
『由良は名字か名前かもわからない。教えてくれなかった。』
「ああ、そういうことか。で、君は?」
そう聞くとまた涙を溜める少年。
『前田、良』
まえだりょう。
小さく呟いたと言うよりはヒソヒソ話みたいに言ってきたので、つられて「りょう君。」と呼ぶ。
『君?なんだそれ。』
え、君付けって当たり前なんじゃ。そこでハッ!と我に返った。
曇天の心に一筋の光が見えた気がする。
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