6-2・黄泉の花の使い道


空間の裂け目から現世(うつしよ)に帰ってくると、紺はのびをして腰に提げていたビンを確認した。


「ぃよっし。急いで持って帰らないと!」


光の花は朝日に溶けてしまう。

ビルからビルへとさっさと巣へ戻る。


後ろから何かがついてくるとは知らずに・・・。


「着いた着いたっと!」 
紺はそっと自室に入ると、ビンを持って布団に潜る。

ビンを開けて花を口のなかに放りこんだ。

「・・・(あ、甘いんだ)。」

目をつぶり、意識だけ隣の百花へとやる。 


―――
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目を開くと畦道に立っていた。そんなに離れていないのだろうか、潮の匂いがたまに流れてくる。 


ここは、まだあまり開拓されていない昔の山下家の土地だ。

「紺?」

懐かしい風景に気をとられて後ろから声をかけられて驚いた。

「あっ、千枝さん。」

そこに立っていたのは当時の山下家の当主、千枝だった。

「あらあら、さん付けて名前を呼ぶなんて今日は雨が降るわねぇ。」


クスクスと千枝は笑う。

千枝は真っ黒な着物を着ている。 
顔は百花とほとんど一緒だ。 
「暑そうだね、今日天気良いけど倒れないようにしないと。」
目を丸くして千枝は紺を見つめた。

「あなた紺だけど、紺じゃないわね・・・?」 

「・・・。」

神木の葉がサワサワと鳴る。 

「千枝さん。俺はあなたのことを守りたかった。」

「・・・?どういうこっ………?」


いきなり紺は千枝を抱き締めた。 

千枝も最初は固まっていたが、しばらくすると紺の背中をとんとんと、あやすように叩きはじめた。 

「あなたは、大人の紺ね。本当の紺はこんなにお利口さんじゃないもの。」


「・・・俺、そんなに酷かったっけ?」

「ええ、何も信じない!って全部突っぱねて、狐の仲間にも体に触れさせようとはしないじゃない。」

「ごめん。でも千枝さんの事、本当は大好きだったんだよ。」

「・・・ありがとう。可愛い紺。」

千枝はよしよし、と紺の頭を撫でる。

紺は今、魂だけを過去に飛ばしてきている。 
では、過去の紺の魂は・・・?

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