6-1・空間の裂け目


紺は落ちながら空中でくるり、と一回転すると大きな狐に変身した。


体を伸ばし、落下していくと空間の一部がきらり、と光った。

「(あそこだ!)」

と風を蹴るとその光へと突進する。

光に触れた、と思った瞬間―――色とりどりの光が散っている「光の花畑」が目の前に広がっていた。



ここは、あの世とこの世の境目。 
いわゆる三途の川の手前あたり。 

ごくたまに、人間がうっかり作り出した「歪み」から光の花畑に来ることができる。

お稲荷さん達には造作もなく来れる場所だが、紺のようなフリーの狐にはよっぽどじゃないと来れない場所なのだ。

紺はまわりを見渡した。 
そして足元をうめる花を摘みはじめた。 


「さて、こんなもんかな。」
腰に提げていたビンに光の花を半分程いれたところで蓋を閉めて立ち上がる。


ふと、視線を感じた。

キョロキョロと視線のもとを探すと、ちょっと離れたところで白い狼がこちらを見ているのに気付いた。 

「あ・・・。」
どっかで見たことあるな。と思って近づこうとすると、狼は後退する。


「あの、すみません!」

呼びかけてもじっとこちらを見ているだけ。 

「・・・まぁ、いっか。帰ろ。」


仕方なく狼は諦めて紺は空間の裂け目から帰ることにした。

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