5-1・悲劇と喜劇は紙一重
神威は百花を抱き上げベランダから百花の部屋に入る。
「んんー…。神威じゃん、おかえり。あれ?百花、力なくなってるね。」
目を擦りながら、護が押し入れから出てきた。
「ああ、ちょっと紺を叩き起こしてきてくれ。」
「はぁい。」
護は玄関から出ると、蛇に戻り紺の部屋へポストからにょろにょろと入っていった。
「顔色が悪いな・・・。」
しばらく静かになり、代わりに隣からドタドタ・・・だだだ・・・ガシャーン!という音が聞こえてきた。
「何をやってんだ?」
そう言った瞬間玄関をバターン!と開け紺が護の首根っこを捕まえて入ってきた
『ちょっと大家さん!護が俺のあ・・・って大家さんんんん!?』
「紺、静かに。桃が力を使いすぎてな・・・悪いが力をわけてくれないか。」
『え、いいけど。神威さんは出来なかったっけ。』
「私が力を与えるといらない力も与える可能性が出てくる。」
腕を組むと神威は桃の顔を覗き込んだ。
『・・・今回はどこの森に行ってたの?』
紺は護を押し入れに突っ込むと百花の手を握りながら聞いた。
「富士の樹海。」
『うわぁ、妖怪でさえ引く場所なのに。』
「ああ、それはもう酷かった。木々や大地が荒れ、やってきた人間を殺しはじめている。慰めに歌ってやったが、人間が変わらんことにはなぁ、癒しにもならんだろう。」
『はぁー、毎度ご苦労様。』
「おおそうだ。せっかくだから百花に力を与えた後に私からお前に力を与えよう。」
『えっ!マジで!?』
紺はお稲荷様とは違い、神の使いでも何でもないタダの妖狐なので、神の力を分けてもらえるのは無理だ。
なのでとても嬉しかった。
「ああ、出来ることが増えるやもしれんな。」
『やったね!』
ぐったりとしている百花を抱き抱え、鼻歌を歌う紺。
この後ちょっとした悲劇が彼を襲うことになるとは知らずに。
百花の顔色が良くなり、脈も安定したので紺は手を離した。
『はー、つっかれた!』
大の字で紺が倒れこむ。
「ご苦労。」
『なんのなんの!』
神威が紺のそばに座った。
「では約束通り・・・。」
『え』と言った瞬間には遅かった。
紺は
神威に口付けされていた。
『〜〜〜〜〜!?』
大家さん、助けて!と横を見ると。
バッチリ目が覚めてらっしゃった。
「あ、あ、あ、あんた達・・・!人様の家で不純同性交遊すんなー!」
いきなり現れた特大ハリセンで二人は吹っ飛んだ。
なんでこうなるの?
そのしばらく後に誤解は解けてもしくしくしくしくと紺は部屋の隅に体操座りで泣いていたという。
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