4-4・義兄弟
後日のとある大学
百花はいじめられていないだろうか・・・。
百花はちゃんとご飯食べているだろうか・・・。
百花は可愛いから不安だ・・・。
百花の兄、一成(かずなり)。
かなりのシスコンである。
現在一成は大学でバイオ技術を学び、ダイオキシンを分解する微生物を培養しようとしているのだが、なかなかに難しい。電子顕微鏡を覗きながら微生物を扱っているが、内心は妹ばかり考えていた。
「あー。心配だ・・・。」
「俺はおまえが心配だ。」
顕微鏡を覗く一成の後ろから話し掛けたのは、李紅龍だった。
「ああ、紅龍〜。大丈夫だよ。いくらなんでも僕はリアルバイオハザードなんて起こしたくないからね。」
もし探している微生物が見つかったとしても、自然界に何らかの影響があるかぎりは培養したものを外に出すのはかなり危険である。
自然界の土の中から見つけたとしても・・・だ。
「紅龍のとこ(研究室)はどんな感じ?」
「今度本国で実験することにした。」
本国、というのは中国のことである。
「緑化うまくいくと良いねぇ。」
「ああ。」
実は李紅龍はモデルをやりながら大学生としてバイオ技術を研究している。
一成とは昔から仲良く、その影響で大学に行くことにしたらしい。
「君がいるから桃をあのアパートにいるのを許してるけど、常に君がいるわけでもないしねー。」
シャーレの蓋をしめ、棚にもどすとため息がでた。
「ただねぇ、君の酒が入った時が心配でね。」
「・・・申し訳ない。」
「母さんと揉めたんでしょ?」
「・・・。」
元々紅龍は慶の使役龍だったのだが、ある事件(成や桃は知らないが)によって紅龍の主を辞めた。
紅龍にとっては捨てられたわけなのだ。
仕方なく兄弟のような一成か百花の使役龍として生きていこうとしたが
「「え、いらない。」」
と即答され、仕方なくフリーの龍として生活している。
「母さんはさ、自立してほしいんだと思うよ。俺達兄弟のように育ったじゃん?母さんも君を息子だと思ってたし。」
「・・・。」
「主を辞めてもアパートにいるように言ったのはやっぱり寂しいからだし。」
紅龍はため息を吐いた。
「わかっている。しかし、今さらどうすればいい。私は慶にどう接すれば良いのかわからん。」
そういうと、紅龍は一成の研究室を後にした。
「やれやれ。反抗期ですか。」
母と義兄の和解はまだ先のようだと腕を組んで考えていたが、成は白衣を脱いで学食へと向かった。
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