4-2・家族
山下家の構成は
父・豊(ゆたか)
母・慶(けい)
兄・一成(かずなり)
妹・百花(ももか)
の四人家族だ。
なんだか縁起の良い感じがする。
中でもスピリチュアル能力があり最強なのが母の慶。父の豊はわりと一般に近い人物だが、特技は心霊写真という微妙な存在だった。
「もも、釘取って。」
屋根から下に呼び掛けたのは兄・一成だった。
「お兄ちゃん、私も上りたい!」
百花は釘を渡しながら一成にお願いする。
「ダメ。俺一人で精一杯なのにおまえに何かあったらやばいだろ。」
「ちぇー。」
小さい頃はよく二人でいたずらしてたのに、一成が大学生になってからいつもこうだ。このアパートに移るときも随分両親に反対した。
「百花、お前はもう高校生だ。あんまり無茶するなよ。」
「むぅー。いーもん、後でアイス奢ってね!」
「はいはい、てか俺が直してやってるのに奢るの?」「うん、やったぁ!」
この二人、相当ブラコンシスコンらしい。
「百花、そっちはどう?」
二階七号室、空かずの間と言われる部屋から慶が顔を出した。
中は天井が一部ベニヤ板で補強されていた。
「お兄ちゃんが頑張ってるー。」
「はー、中はお父さんがなんとかしてくれたけど・・・。」
ちらり、と神木の方に視線をやると、みのむし×5がうなだれていた。
「まったく・・・、紅龍は前にもこの部屋を壊したのに、懲りないわねぇ。」
いきなり紅龍が顔をあげ、慶をにらんだ。
ばちぃっ!
視線がぶつかる音じゃなかった。
紅龍が出した雷を、慶が雷で返していたのだ。
「ちょっ、母さん!部屋が燃えるから!」
豊と一成が必死になだめ、百花は紅龍をハリセンで叩いて、ゆさゆさと揺らす。回りにいた蓑虫仲間は見ているだけで酔いそうだと思った。
「ちょっと!まだ反省していないわけ!?あんたたちが酔っ払ってどんちゃん騒ぎして、天井壊したんだからね!特に紅龍、二階の七号室使い物にならなくなったのはあんたのせいでしょ!」
「俺は慶が嫌いだ。」
「はあ?」
「・・・。」
紅龍はそれきり黙ってしまった。
- 38 -
[*前] | [次#]
ページ: