3-3・最強大家発動
「も、百・・・?落ち着いて。」
流石に気づいた縞が、なんとか止めようとしたがすでに遅し。
「・・・だから何?」
深い、暗い声が響く。まわりの空気が重くなった。縞が尻尾をだしていたら、きっと膨らみ、耳も真後ろを向いているはずだ。ちなみに、これが百花の最後の通達だったのだが。
「仕方ないんだ・・・僕なんて・・・。」
誠はちょっと寒いな、ぐらいでまわりを気にせず不幸自慢まっしぐら。
「馬鹿が。」
は?と頭を上げた時だった。
誠はやっと、先ほどの縞と呼ばれる女性よりも数倍の威圧が自分に向けられていることに気付いて、動けないどころか呼吸が止まり、今まで流したことが無い位の汗が吹き出、恐怖による涙があふれ出た。
視線さえも離せず、命の危機まで感じる。
『大家さん!』
いきなり公園の茂みから竹谷紺が飛び出してきて、百花に飛び付いた。
誠も縞にお姫様抱っこされて百花から離れる。
誠は目の焦点があっておらず酸欠を起こしていた。
「百花!やりすぎだ!」
しかし、百花は正気を失っていた。紺に抑えられ唸っている。
どうやら誠の負の感情にあてられてしまったらしい。
『大家さん、ゴメンね!』
紺は百花の顎をさらい、唇を重ねて力を無理矢理奪って意識を失わせた。
「縞。お願い今の黙ってて・・・。」
「流石に私も怖くて言えない・・・。」
二人は一瞬考え、ゾクッとなった。
縞はまだ混乱して瞳に何も映し出さないままの誠をベンチに座らせ、額に手のひらをあてると暗示をかけた。
起きたら全てを忘れるように。ついでに強い正義の意志を引き出せるように。
「折角知り合ったのに淋しいが、さらばじゃ。」
不思議と、彼と関わっていたかった。なぜかは知らないけれど、懐かしい感じがした。
そして誠を公園に置いて、紺と縞は百花を連れて満月荘へ帰っていったのだった。
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