3-2・最強大家登場
百花は学校の帰り道にある魚屋に寄った。
通りかかったら、なんとなく鮭が美味しそうだったので魚屋に来ていた若奥様を捕まえ、半分ずつお金をだしあって一匹を半分ずつ捌いてもらったのだ。
「塩焼きかな。やっぱり。」
バターも良いけど。
つぶやきながら自転車を漕いでいると、公園の近くで自分と同じ高校の男子が、縞とにらめっこしていた。
………なにやってんだ?
控えめだが、一般人にはかなりきつい妖気が感じられた。
「縞〜。何遊んでるの?」
百花は近づき、声をかけた。
「ふっ!はぁっはぁっ!」
縞がこちらを向いた途端、少年は止まっていた呼吸を再開させる。
「おかえり、百花。」
にこりと縞はわらう。
「縞もおかえり。珍しいね、コンビニに寄ったんだ?」
「ああ、商店街の魚屋が臨時休業になっていて、な・・・。」
明らかに寂しそうな顔だ。
「あ。今日は私鮭多めに買ったからわけるよ〜。今切ってもらったから新鮮だよ。」
「本当!?助かる〜。」
「ところで、この子誰。」
「あ。」
忘れてました。という顔をして縞が振りかえると。
少年はうずくまって泣いていた。
「えっ・・・ふくっ」
この変な声は、高校生の少年の泣き声である。
……………………………
「はい、お茶どうぞ?」
百花は公園のベンチにて少年を座らせ冷たいペットボトルのお茶を渡した。
「す、すまんの・・・。」
真正面に立っているのは縞。申し訳ない、と頭を掻いている。
事の成り行きを聞き、少年を宥めているところだ。
「まぁ、縞が丁度気が立っていたから少し大げさになっちゃったけど、本当はどうして万引きなんかしようとしたか聞きたかったんでしょ?」
「さすがだな、百花。その通り。」
「私も気になるよ。こうなったきっかけは君の責任もあるんだから、ちゃんと話して。」
「ふぅっ!ぼっ、僕、は。」
泣きながら話すので聞き取りにくかったが、まとめると
百花と同じ銘陵(めいりょう)高校の一年生。
名前は樋口誠(ひぐちまこと)。万引きしていたのは「友達」にやってこいと言われたから。
百花は眉間を押さえながら呻いた。
「それって友達じゃないじゃん・・・。」
「でも、僕にはそうするしか無かったんです!」
少し、イラッとした。
「弱いから、すぐに標的にされるしチビだし・・・。」
さらにイラッ。
横にいた縞は百花の不穏な気配にざわりと毛が逆立った気がした。
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