3-0・優しい猫
がりっがりっがりっ。
「あぁっ!?トメサンや、柱はやめとくれ!大家に叱られる!」
茶トラ猫のトメサンをたしなめているのは猫又の墨色 縞(すみいろ しま)。
口調はあれだが、見た目はスウェット姿の休日のOL。
化粧をすると某女優に似ていると言われる彼女も、今はヘアバンドで前髪を上げてスッピンになり、顔のお手入れ中だ。
途中、お友達のトメサンが遊びに来たので世間話をしている。
「でな。うちの大家は大層猫好きで、だけど猫アレルギイだから長時間一緒にはおれなかったそうじゃ。私は毎日風呂に入っているから大丈夫なんだと。」
好きなのにダメは辛いのぅ・・・とトメサンがつぶやいた。
ピンポン♪とチャイムがなったので出ると、マスクをした百花がいた。
「おお、今丁度知り合いとおまいさんの話をしてたところでな。」
百花は興味深そうに中をのぞいたが、さすがに中にははいらなかった。マスクだけでは心細かったのだ。
「あ、これうちでとれたマタタビ。乾燥したから持ってきた。」
百花はなんだかいい匂いのするビニールを差し出した。
「!!!まぁまぁまぁ。ありがとう百花。これで友達に最高のおもてなしが出来るよ。」
「そう?よかった。また作るね。」
だんだん百花の鼻がムズムズしてきたので縞にごめんねと伝えて去っていく。
振りかえると、匂いにつられて足元にトメサンが来ていた。
「不憫じゃ・・・。」
縞は百花が作ったマタタビの枝に酔いながら、大家のことを思う。
そんな情の深い猫又のお話。
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