1-2結局のところ
ぎゃあぎゃあと、私が鉄扇を持って紺を追いかけていると
「ただいま〜。今度は何やらかしたの、馬鹿紺。」
と、白い髪の少年が部屋に入ってきた。
「お帰り、護!」
私は護(まもる)という、自分の式鬼(しき)を出迎えた。護は白い子蛇の精。学校の裏山で死にかけてたところを助けてから、式鬼になると言い張るので面倒になって許してしまった。というか、勝手になってた。
『でた!押し掛け女房護く、ドゴォ!
『ぐへぇ』
私は畳んだ鉄扇で紺のみぞおちをクリーンヒットさせ倒した。
「うわぁ。」
護があらら、と無表情で見届ける。
「この馬鹿狐は御飯あげた恩を忘れてこの私を押し倒し、キス、さらには胸をまさぐりやがった。」
「はぁ、万死に値する行為ですね。自業自得です。」
きゅう、と美しい狐が目を回し転がっている。
この姿なら、ある程度のイタズラは許されるのに・・・と護はわかっていて黙っている。調子にはのせたくない。
でもイタズラはともかく、性的行為をするのは珍しい。ああ、発情期の季節ですからね。
と、口には出さずニコニコ笑っておく。
「護、どうした?」
「いいえぇ。その辺で許してあげるご主人は優しいなぁ、と思いまして。」
「はっ!動物虐待するほど鬼じゃないし。」
じゃあさっきのはなんだったのか。護は白い目で主を見つめた。
「そんなことより護、報告は。」
「・・・はい、今日は結界が綻んでいる場所が1箇所ありましたので強化しました。」
「ん〜、また紅龍(ホンロン)が酔っ払って穴開けたな?」
「おそらくは。」
紅龍とは、2階の6号室に住む龍の事だ。
「わかった。注意しておく。」
「はい、ふああ。すみません、僕寝ます・・・。」
「ご苦労。ゆっくり休んで。」
とてとてと、護は押し入れの寝床へ向かった。
「さて、何をしているのかな?馬鹿狐。」
気絶したふりをして、桃の膝には狐の頭が乗っかっている。
きゅう〜ん。
と鳴き、甘えてくる狐にため息をつきながら仕方なくしばらく頭をなでてやっていた。
たまの休みだ。こんなのもいいかな、と百花は薄ら笑い結局狐姿の紺を無理矢理枕にして昼寝をするのだった。
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