1-1・これが日常



『は、腹減りましたぁ、何かくださひぃ〜。』

チャイムが鳴ったので開けたら、1階2号室に住んでいる、竹谷 紺 (たけや こん)が眉毛を八の字にして立っていた。

「・・・お前な、金持ってるんだから買いに行けよ。」

『お腹空き過ぎていけません〜。変身がとけてしまいますぅ。』

「ちっ、根性なしの狐が・・・。」

仕方ないので入れてやる。因みに大家こと私、由良は1階1号室に住んでいるので、竹谷紺はお隣さんになる。

「悪いが、油揚げは切らしているから普通の味噌汁と御飯だからな。」

『かたじけない・・・。』
「油揚げ位多めに買っておいて冷凍しとけよな。」

『冷凍すると機械臭くなりますよ〜?』

「あのなぁ、うちにくんなって意味なんだけど。」



かれこれ管理人生活が始まって2ヶ月。

始まって一週間経ったとき、いきなり超絶美形の青年が家に腹減ったと狐の尻尾を出して尋ねてきた時は驚いたが、4日に一度はこうやって助けを求めにやってくるので慣れてしまった。

おわかりだろうが、ここの住人は大変個性豊な方々が揃っている。

1階2号室・化け狐。
1階3号室・子泣き爺。
1階5号室・猫又。
1階6号室・無人。
1階7号室・福の神。


2階1号室・化け烏。
2階2号室・無人。
2階3号室・ネズミ男。
2階5号室・梟の精霊。
2階6号室・中国の龍。
2階7号室・破壊され空かずの間。

と言った感じ。4号室というのが無いのは、縁起かつぎだ。



ていうか、もはや人が居ない。

一応彼らはヒトの姿をしており、普段は社会に紛れて立派な仕事人として活躍をされている。

しかし、結界を張って周りからは目立たな〜いアパートでは私生活がバッチリ自然体なわけで。



「・・・〜しぃいねぇえ!この、馬鹿狐がぁあ!」

ガッショ〜ん!


「ふぇふぇふぇ。またやっとるのぉ。」

「こりんのう、あのアホ狐は・・・。」

休日、屋根でお茶をすすりながら日向ぼっこをする福の神と猫又が笑う、そんな妖怪アパートなんです。

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